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対位法の教え

 フェルドマンは、僕の習作の楽譜を丹念に見たあとに「君の音楽には対位法がないね」とバッサリ。そこで、対位法について質問してみると、フェルドマンは、さまざまに言葉を言い換えながら説明してくれるのだが、僕が十分に理解していないとみると、その説明の一節をなんどか呟きながら僕の五線譜のすみに「Counterpoint is not explainable in relation to linear structure. It is only demonstrable on a note to note basis.(対位法とは、線的構造との関係で説明されうるものではなく、ただ音と音を基準として表示されうるものである)」と書き記してくれた。

 フェルドマンがいう対位法とは、伝統的な作曲の書式ではなく、音と音との関係性そのものにほかならない。レッスンにおいても、音を関係づけるときに、並行、反行、斜行という対位法の三つの原則に留意しなくてはならないということをメモ用紙にたくさんの音符やイラストを書いて説明してくれた。フェルドマンの音楽に聴き入っていると、このような対位法の関係性がスタティックな状態で随所にあらわれてくる。また、いくつかの作品の楽譜を手にとってみると、そこには、対称/非対称、反復、並置、置換といった織物にみられるパターンの原理も見いだすことができる。フェルドマン自身、ラグ(敷物)の蒐集家として知られていたが、このような文様パターンの原理がフェルドマンの音楽のなかに深く入り込んでいる。そればかりでなく、ラグの制作プロセスがフェルドマンの作曲にも浸透しているのである。