サックス奏者・矢野沙織とピアニスト・丈青(SOIL&“PIMP”SESSIONS)による新ユニット〈Besties our sounds.〉が始動!

ありそうでなかったコラボレーションといえばいいだろうか。サックス奏者の矢野沙織と、SOIL&“PIMP”SESSIONSのピアニストである丈青。精力的に活動してきた2人が、新たなユニット〈Besties our sounds.〉を始動させた。デビューアルバム『rose garden』は、書き下ろしのオリジナル曲とスタンダードナンバーのカヴァーを、ホールでの一発録りという手法でレコーディングされた作品だ。

SOIL&“PIMP”SESSIONSの秋田ゴールドマン(ベース)と、PLAYERS x PLAYERSの小名坂誠哉(ドラムス)とのカルテット編成も安定感があり、シンプルながらもバラエティに富んだ作風で聴き応えも充分。ここでは、敢えて2人が組んでアルバムを作り上げた理由を、じっくりと語ってもらった。

Besties our sounds. 『rose garden』 Kamnabi(2026)

 

――そもそも、2人が最初に出会ったきっかけは。

矢野沙織「2024年にライヴで共演する機会があったんです。サックス奏者の纐纈之雅代ちゃんが私を誘ってくれて、その時のピアニストが丈青さんでした」

丈青「それまで不思議とお互いに会ったことがなくて。もちろん沙織の存在は知っていたし、音も聴いていましたけれど、直接の面識はなかったんです。2年前に初めて会って、そこから急接近ですね。3人でツアーをやっているうちに相性の良さを感じて、そこから〈2人で何かやってみようか〉と自然に進みました」

――それで、本格的にこのユニットでアルバムを作ろうと動き出したわけですね」

丈青「そうですね、とりあえず作品をリリースしようと。すでに何度かライヴもしていたので、楽曲をじっくり練り上げてからレコーディングという正しい順序で進めることができました。このプロセスを踏めたことが、ファーストアルバムならではのエネルギーを与えてくれたと思っています」

――確かに、アルバム全体の印象として、バラードなども含めて、非常にアグレッシヴというか、生々しくて心地よい緊張感とエネルギーに満ちた演奏だと感じました。

矢野「スタジオではなく、コンサートホールでのレコーディングという選択が大きかったですね。あとは、それぞれの楽器や特別な録音環境に恵まれました。アルトサックスって、実は録音するのがなかなか難しい楽器なんです。でも、今回は素晴らしい音響で録ることができて大満足です」

丈青「〈美しいアルバム〉にしようと考えていて、その美しさを第一の基準にするには、やはりホールの響きが必要だったんです。エンジニアさんや調律師さんといったスペシャリストの方々が、素晴らしい力を貸してくれて、全員が同じ空気を肌で共有しながらレコーディングを進めました。スタジオのブースで遮られた環境とは全く違っていて、天井の高さや空気感がダイレクトに音に注入されていると思います」

――レコーディングのために1900年代初頭のヴィンテージ・スタインウェイ(Model C)を特別にホールに運び込んだそうですが、どのような意図があったのでしょうか。

丈青「これには明確な理由があるんですよ。通常、レコーディングでよく使われるのは、いわゆる〈フルコン(フルコンサート・グランドピアノ)〉と呼ばれる一番大きなサイズ(Model D)です。もちろんそれはそれで素晴らしいのですが、音が大きいし、弦も太く長いので、ウッドベースの低音を消してしまうことがあるんです。このレコーディングでは、生演奏している段階で全員の音が美しく聴こえ合う状態が理想でした。今回選んだ〈Model C〉はフルコンよりもひとつ小さいサイズで、これがウッドベースやアルトサックスの倍音とものすごく相性が良かったんです」

矢野「楽器や環境が変わるだけで、自分は何をどう演奏できるのか、ということまで変わってくるということを実感しました。そういう最高の環境でこのアルバムを作れたことで、世界が広がりましたね」

丈青「実際、彼女は最近ピアノを練習しているみたいで、共演するピアニストに〈これ弾いてみて!〉ってバッハの譜面を持ってきたりしているらしいですよ(笑)」

矢野「そうなんです(笑)。このレコーディングをきっかけに、すっかりピアノにハマってしまって。趣味が全然なかったので、ピアノを弾くのがとても楽しいんですよ」