サックス奏者・矢野沙織とピアニスト・丈青(SOIL&“PIMP”SESSIONS)による新ユニット〈Besties our sounds.〉が始動!
ありそうでなかったコラボレーションといえばいいだろうか。サックス奏者の矢野沙織と、SOIL&“PIMP”SESSIONSのピアニストである丈青。精力的に活動してきた2人が、新たなユニット〈Besties our sounds.〉を始動させた。デビューアルバム『rose garden』は、書き下ろしのオリジナル曲とスタンダードナンバーのカヴァーを、ホールでの一発録りという手法でレコーディングされた作品だ。
SOIL&“PIMP”SESSIONSの秋田ゴールドマン(ベース)と、PLAYERS x PLAYERSの小名坂誠哉(ドラムス)とのカルテット編成も安定感があり、シンプルながらもバラエティに富んだ作風で聴き応えも充分。ここでは、敢えて2人が組んでアルバムを作り上げた理由を、じっくりと語ってもらった。

――そもそも、2人が最初に出会ったきっかけは。
矢野沙織「2024年にライヴで共演する機会があったんです。サックス奏者の纐纈之雅代ちゃんが私を誘ってくれて、その時のピアニストが丈青さんでした」
丈青「それまで不思議とお互いに会ったことがなくて。もちろん沙織の存在は知っていたし、音も聴いていましたけれど、直接の面識はなかったんです。2年前に初めて会って、そこから急接近ですね。3人でツアーをやっているうちに相性の良さを感じて、そこから〈2人で何かやってみようか〉と自然に進みました」
――それで、本格的にこのユニットでアルバムを作ろうと動き出したわけですね」
丈青「そうですね、とりあえず作品をリリースしようと。すでに何度かライヴもしていたので、楽曲をじっくり練り上げてからレコーディングという正しい順序で進めることができました。このプロセスを踏めたことが、ファーストアルバムならではのエネルギーを与えてくれたと思っています」
――確かに、アルバム全体の印象として、バラードなども含めて、非常にアグレッシヴというか、生々しくて心地よい緊張感とエネルギーに満ちた演奏だと感じました。
矢野「スタジオではなく、コンサートホールでのレコーディングという選択が大きかったですね。あとは、それぞれの楽器や特別な録音環境に恵まれました。アルトサックスって、実は録音するのがなかなか難しい楽器なんです。でも、今回は素晴らしい音響で録ることができて大満足です」
丈青「〈美しいアルバム〉にしようと考えていて、その美しさを第一の基準にするには、やはりホールの響きが必要だったんです。エンジニアさんや調律師さんといったスペシャリストの方々が、素晴らしい力を貸してくれて、全員が同じ空気を肌で共有しながらレコーディングを進めました。スタジオのブースで遮られた環境とは全く違っていて、天井の高さや空気感がダイレクトに音に注入されていると思います」

――レコーディングのために1900年代初頭のヴィンテージ・スタインウェイ(Model C)を特別にホールに運び込んだそうですが、どのような意図があったのでしょうか。
丈青「これには明確な理由があるんですよ。通常、レコーディングでよく使われるのは、いわゆる〈フルコン(フルコンサート・グランドピアノ)〉と呼ばれる一番大きなサイズ(Model D)です。もちろんそれはそれで素晴らしいのですが、音が大きいし、弦も太く長いので、ウッドベースの低音を消してしまうことがあるんです。このレコーディングでは、生演奏している段階で全員の音が美しく聴こえ合う状態が理想でした。今回選んだ〈Model C〉はフルコンよりもひとつ小さいサイズで、これがウッドベースやアルトサックスの倍音とものすごく相性が良かったんです」
矢野「楽器や環境が変わるだけで、自分は何をどう演奏できるのか、ということまで変わってくるということを実感しました。そういう最高の環境でこのアルバムを作れたことで、世界が広がりましたね」
丈青「実際、彼女は最近ピアノを練習しているみたいで、共演するピアニストに〈これ弾いてみて!〉ってバッハの譜面を持ってきたりしているらしいですよ(笑)」
矢野「そうなんです(笑)。このレコーディングをきっかけに、すっかりピアノにハマってしまって。趣味が全然なかったので、ピアノを弾くのがとても楽しいんですよ」

――アルバムは書き下ろしのオリジナル曲と、スタンダードナンバーが非常にバランスよく配置されています。
丈青「スタンダードに関しては、僕自身ジャズクラブで普段からたくさん演奏していますし、大得意な分野ですが、これまで僕が戦ってきた市場ではレコーディングする機会がなかったんです。だから、スタンダードの最高の名手である彼女と一緒に形にできたことは、絶妙なタイミングでした」
矢野「“Fly Me to the Moon”は、丈青さんが最初から素晴らしいアレンジを用意してくれました。あと、“I Fall in Love Too Easily”や “Billie’s Bounce”も、アルバム全体の流れの中でいい感じにハマりましたね」
――海外のスタンダードに混じって、日本の伝統曲“Sakura”が入っているのも印象的ですね。
丈青「日本の古くからある曲だし、このプロジェクトの根底にある〈美しいアルバムを作る〉というコンセプトに一致していると思ったんです。彼女のサックスのトーンやカラーにも絶対に合うと確信していたので、これは活動の初期の段階からアレンジを練っていました」
――表題曲の“rose garden”などのオリジナルは共作名義ですが、どのように作っていったのですか。
丈青「AメロとBメロを別々で作って合体させるような形式ではなく、曲の肝となる部分を2人で話し合いながら作っていくというやり方です。基本的には、僕が書いた譜面をベースにして、2人で一緒にスタジオで音を出して、徹底的にディスカッションを重ねていきました」
矢野「私は誰かと一緒に曲を作るのも初めての経験でしたし、自分1人では普段絶対にアプローチしなかったような新しい扉を開けてもらった感覚があります。メロディを書いてコードをつける、というような単純な作業ではなく、ぐにゃぐにゃと苦しみもがいて出来上がるのが面白いんです(笑)。夜に話し合って次の日の朝起きると、丈青さんから悩んだ末の譜面の写メが送られてきたりして(笑)」
丈青「そうなんですよ(笑)。リハーサルやライヴをしながら修正を繰り返して、最後まで妥協せずに作り込むことができました。だからこそ、自信を持って音源に残したいと思えるクオリティに仕上げることができたんだと思います」
――〈Besties our sounds.(親友同士の私たちのサウンド)〉というユニット名には、どのような思いが込められているのですか。
矢野「2人で作ってきた時間や空気、いわば〈生活音〉の延長がそのまま音楽になっている、という感覚があって、それを共有できる名前にしたいと思いました。聴き手の生活にも自然に入り込む音楽であってほしい、という想いも込めています」
丈青「基本的には僕と沙織がいれば〈Besties our sounds.〉なんですが、今回は信頼する秋田ゴールドマンと小名坂誠哉に入ってもらって、素晴らしいピアノトリオ+サックスの編成で録音できました。でも、この先は、例えばDJを迎えてもいいし、クラシックの要素を取り入れたっていい。2人の軸さえブレなければ、どんなジャンルの音楽とも融合できる、ものすごく可能性を持ったユニットだと思っています」
LIVE INFORMATION
Besties our sounds.「rose garden」Release Live

2026年6月30日(火)東京・恵比寿 BLUE NOTE PLACE
1st Stage:開場/開演:18:00/18:45
2nd Stage:開場/開演:20:15/21:00
出演:丈青(SOIL&“PIMP”SESSIONS)(ピアノ)、矢野沙織(サックス)、社長(SOIL&“PIMP”SESSIONS)(DJ)
※ご来場いただいた方に特典ポスター(A3/フルカラー)をプレゼント
詳細:https://www.bluenoteplace.jp/live/besties-our-sounds-260630/
PROFILE: 矢野沙織
東京出身のサックス奏者。9歳のときブラスバンドでアルト・サックスを始める。チャーリー・パーカーに衝撃を受けジャズに傾倒。ジャズの名門SAVOYレーベル日本人アーティスト第2弾として16歳でデビュー。日本にとどまらずニューヨークでもライブを重ねる一方、テレビ朝日系「報道ステーション」テーマ曲に起用されるなど活躍。花王のCMで使用されたオリジナル曲「I & I」を収録したベストアルバムが第22回日本ゴールドディスク大賞 ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。ジャズの枠を超えて広く注目を集めた。
PROFILE: 丈青
広島出身のピアニスト。3歳からピアノにふれクラシックを学ぶ。同時にブラックミュージックをはじめとする多岐にわたる音楽に親しみ、その語法を独学で習得。「鈴木勲OMA SOUND」への参加を期にジャズシーンに広くその名が知れ渡り、日野皓正や菊地成孔、José JamesやJamie Cullumとも共演を重ねる。2003年にはSOIL&“PIMP”SESSIONSに加入。同バンドから派生したピアノトリオJ.A.Mやソロ作品のリリースなど活動の幅を広げている。
Besties our sounds. 公式サイト:https://www.bestiesoursounds.com/