バブルの如く湧き出るサックススパークリングなパッション・ジャズ!
矢野沙織、約2年半振りの最新作が届いた。基軸をビ・バップに据えた硬派な姿勢と、キューバン・ラテンへの接近や作詞&歌唱への挑戦など遊び心が交錯する快作である。まさに、バブルの如く湧き出るサックススパークリングなパッション・ジャズ!
「アルバム・タイトルやジャケット写真の構想は初めに決めていたんです。キャンディー・ダルファーさんのアルバムのような可愛いタイトルとアングルの写真でやりたいって…(笑)」
そんなキュートな一面を覗かせながらも、デビュー以来12年、真摯にビ・バップを追究し続けてきたスタンスこそが彼女の個性と言えるだろう。
「ずっとジャズの本流にいるって言われるのは何故かな?って思うことがあります。わたしは元々いろんな音楽が好きで聴いていますが、ジャズから外れないのは“ずっと飽きないから”なんです。まだまだ出来ていないな、と自分で感じる部分はたくさんありますよ。でも、それはネガティヴな気持ちではなくて、まだ伸びしろがあるんだという嬉しい気持ちとして…(笑)。40~60年代のジャズはわたしにとって新しい音楽としてインプットされていて、しかももう観ることが叶わないから色褪せることがない。だから憧れて、自分もそこへ近づきたいと思うんでしょうね」
気心の知れた昔からのバンド・メンバー、そしてそれぞれ1曲ずつサルサスインゴサとSOIL& "PIMP" SESSIONSのメンバーが参加したレコーディングは、これまでになくリラックスした雰囲気の中、周りへの感謝の気持ちをもって臨むことができたそうだ。
「ジャズという枠にとらわれることなく、1曲1曲を短編の映画でも観るような感覚で、ご自分が今現在対峙している景色と合わせて聴いてもらえれば嬉しいですね。その人にとっての季節だったり年齢だったり、それぞれの景色の中で…。映画や小説がそうであるようにわたしの演奏するジャズも、人の生活に寄り添うような、そんな音楽でありたいと願っています」
素晴らしい音楽観である。彼女の言葉からは本来在るべき音楽の本質、今後ジャズという音楽が進むべき方向性や可能性、そんな様々な事を考えさせられる。
「本当にそういう音楽を演奏することが出来れば、無理に最新の流行を探したり採り入れたりする必要もない…と、わたしは思いますよ(笑)」
少女のように無邪気な側面と、人生を哲学してみせる成熟した側面を併せ持った魅力的な女性…それが矢野沙織。僕が考えるところの、これからのジャズの可能性を彼女に託してみたいと、そう思った。そんな彼女の力強い新作を存分に楽しんで欲しい。
LIVE INFOMATION
Bubble Bubble Bebop 発売記念ツアー
○6/3(水) 会場:台湾 國父記念館
出演: 矢野沙織(a-sax)中島徹(p)中村健吾(b)小松伸之(ds)大儀見 元(per)
○6/20(土) 会場:埼玉 あすねっと 文化ホール
出演: 矢野沙織(a-sax)中島徹(p)中村健吾(b)小松伸之(ds)