ブルガリアにおけるピアソラ演奏の第一人者として知られ、習得難度が非常に高いアルゼンチン式バンドネオンを本場最高水準と遜色ない超絶技巧で操る若き奇才ストヤン・カライヴァノフによるデビュー・アルバム。とにかく一音一音が明瞭。取り上げる楽曲はピアソラ曲やそれ以前のこてこてな古典ながら、哀愁や泣きを深く滲ませるより古典特有の過密と言っていい情感をぎゅっと凝縮しながら若さ溢れる疾走感とアタッキーなタッチで叩きつけてくる。楽曲自体も素晴らしいが、それ以上に彼が提示するバンドネオンの楽器としてのポテンシャルの高さに改めて驚かされる。圧倒的な構築性により複数の旋律が絡み合う立体的なサウンドは芸術。