©Parlophone Records Ltd / Photographer: Jean Marie Fox

音楽がその場で生まれてきたように演奏したい――プロコフィエフが伝える多彩な音楽の表情

 セルビア出身のヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチ。これまで古くはバッハから世界の民謡、ポップスまでを取り上げるなど、広いレパートリーと視野を持った活動を行っているが、このほどプロコフィエフの協奏曲を中心としたアルバムをリリースした。他に無伴奏ソナタやヴァイオリン2本のためのソナタ、ピアノとのアンサンブルでの小品を収めるなど、ヴァラエティに富んだプログラムとなっている。

 「自分にとってプロコフィエフは、ヴァイオリンを始めてすぐの頃からとても関係が深い作曲家です。もちろんその距離は一定ではなくて、すぐ横にいたり遠ざかったり、空白の期間もありました。今回のプランはまず協奏曲第2番を収録したいというところから始まりました。私はかつてフィルハーモニア管のアーティスト・イン・レジデンスを2年間務めていたことがあります。そのときに指揮のロウヴァリと初めて演奏したのがこの協奏曲で、せっかくなので形に残したいと思いました。そこに自分が子どもの頃に触れていた小品やデュオを組み合わせることで、プロコフィエフをたどる手がかりにしたいと考えたのです。そうすることでプロコフィエフの音楽の裏にどのようなものがあったのか、彼の音楽がいかに多彩な表情を持っているかがわかってきて、より強く惹かれるようになりました」

NEMANJA RADULOVIĆ, SANTTU‐MATIAS ROUVALI, THE PHILHARMONIA ORCHESTRA 『プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 他』 Warner Classics/ワーナー(2026)

 ラドゥロヴィチのコンサートでは、大曲と同じ比重で小品も取り上げられる。

 「私が取り上げるものは自分にとって特別なものです。どんな小さな作品でも初演の時から長く愛されていて、多くの人々を感動させてきたのです。芸術的な意味では軽く扱われてしまうけれど、自分にとっての価値は同じ。たった30秒で人を感動させる曲と、大傑作と言われるような曲との間に違いはありません」

 とても自由でしなやかな彼の音楽だが、時には楽譜から離れている印象を与える部分もある。

 「自分は常に自由を求める質だとは思います。毎回判で押したように同じことを再現するようなアプローチではなく、音楽がその場で生まれてきたように演奏したい。自分に正直であること、自分自身と調和が取れていることが大切だと思うのです」

 ある瞬間を封じ込めて残すのが録音というメディアで、それを通して、できるだけ美しく人の心に訴えかけるもの、そして自分が聴いていても楽しいと思えるものを作りたいと語るラドゥロヴィチ。このプロコフィエフはその神髄を示している。