深みが増したマーカス・ミラーと15年ぶりのコラボレーション
本作でのデヴィッド・サンボーンとマーカス・ミラーのコラボが15年ぶりと聞いて、90年代の『アップフロント』や『ヒアセイ』などのかつての共演盤の数々が頭を巡った。当時サンボーン=マーカスは抜群の相性の良さでクリエイティヴな音楽を次々と送り出していた。80年代から事あるごとに共演してきていた彼らだが、90年代に入るとどちらもプレイに洗練度が増し、グルーヴ感溢れる音楽は強力な光を放っていた。また、モントルーでのエリック・クラプトンらとのレジェンズでのステージなど、何かと話題性のあるセッションにも事欠かなかった。やがてお互いの音楽の道へと進んでいったが、それぞれのフィールドにいても、遠隔的にシンパシーは通じあっていたと思わせるほど、こうして再びタッグを組んでみると、以前よりも、音楽自体のスケールが大きくなり、深みを増しているのがわかる。サンボーンのサックスはいつになくソウルフルで、しかしながら、時に渋みのあるプレイで楽曲を彩る。
マーカス・ミラーはプロデューサーとしての手腕はもちろん、ベーシストとしての役割も担う。参加メンバーにはオルガンにリッキー・ピーターソン、ギターにニック・モロックなど、サンボーン寄りの人選も目につく。収録楽曲はサンボーンのオリジナルが2曲、マーカス1曲、両者の共作が1曲の他、カヴァー曲はタワー・オブ・パワーのリード・シンガー、ラリー・ブラッグスをフィーチュアしたテンプテーションズのヒット曲“キャント・ゲット・ネックスト・ユー”、ランディ・クロフォードが歌うミシェル・ルグランの“風のささやき”、そしてマイルス・デイヴィスのファンにはお馴染みのエルメート・パスコアールの“リトル・チャーチ”(!!)など、キラリと光る個性を感じさせる。
「山!」と言えば「川!」と答える(?)間柄のサンボーンとマーカス(常に味方同士ということです)。究極のコラボだ。