NYの夏の風物詩として定着している「Blue Note JAZZ FESTIVAL」は2015年、1日限りの野外フェス「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」として形を変えて、日本に上陸。今年で3年目を迎えます。2017年は初の2日間開催、両日ヘッドライナーとしてソロ名義初来日、フェスティヴァル初出演のドナルド・フェイゲンが登場! 豪華ラインナップで今年も開催決定!
かつて日本では、〈ニューポート・ジャズ・フェスティバル・イン・斑尾〉や〈マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル〉などが毎年開催されていて、広々とした野外でジャズの生演奏を楽しむことが定着していた。今年で通算3回目を迎える〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉は、そうした野外ならではの醍醐味を味わうことができる、今となっては貴重なジャズ・フェスティヴァルだ。しかも開催場所は、首都圏なら日帰りで行くことができる横浜赤レンガ倉庫特設会場。見晴らしのいい空間で、港に寄港している超豪華客船を眺めつつ、潮風と演奏のグルーヴに身を委ねることができるのだから、世界に誇りうるジャズ・フェスティヴァルといっていいだろう。
今回の〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉(以下BNJF)は、初めて9月23日(土・祝)と24日(日)の2日間にわたって開催される。
両日のヘッドライナーは、ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ。ザ・ナイトフライヤーズは、フェイゲンが8月3日から開始されている全米ツアーのために新たに結成したバンドである。もちろん、このツアー・バンドの名称は、1982年にリリースされたフェイゲンの初のソロ・アルバム『The Nightfly』に引っかけられている。気になるメンバーの顔ぶれは、コナー・ケネディ(g、vo)、ブランドン・モリソン(b、vo)、ウィル・ブライアント(key、vo)、リー・ファルコ(ds、vo)。驚くべきことに、この4人はすべて20代のミュージシャン。レイチェル・ヤマガタのレコーディングやツアーに参加してきた最年少のリー・ファルコは、まだ22歳だ。それだけに、彼らがフェイゲンの曲にどんな新しい息吹(グルーヴ)を吹き込んでくれるのか、今から楽しみで仕方がない。全米ツアーに先駆けて行われたプライヴェート・パーティでは、フェイゲンのソロ・アルバムからの曲に加えて、スティーリー・ダンの《滅びゆく英雄(Kid Charlemagne)》や《輝く季節(Reelin’ in the Years)》も披露されたというから、なおさら期待が膨らむ。
BNJFは、今年も横浜赤レンガ倉庫の敷地に設置される“BIRD STAGE”と“DIZ STAGE”の2つのステージで交互に行なわれる。23日の“BIRD STAGE”には、ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズの他に、ジャズ・フェスティヴァルの花形であるビッグ・バンドが登場する。エリック・ミヤシロが音楽ディレクターを務めるブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラだ。第一回目のパット・メセニーに対して、今回はサックス奏者のデヴィッド・サンボーンをフィーチャーした形でステージを飾る。そして初日の“BIRD STAGE”のトップを飾るのは、JUJU with TAKUYA KURODA BAND from NY。女性歌手のJUJUと、ニューヨーク在住のトランペット奏者である黒田卓也が地元のジャズ・ミュージシャン仲間を引き連れて共演するスペシャル・プロジェクトだ。
一方、23日の“DIZ STAGE”でもっとも大きな反響を呼びそうなアクトは、トランペット奏者のロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターである。ロイ・ハーグローヴが、ほぼ同時期に制作されていたディアンジェロの『Voodoo』(2000年)、コモンの『Like Water For Chocolate』(同)、エリカ・バドゥの『Mama's Gun』(同)への参加を経て、2003年に世に問うたアルバムが、ザ・RHファクターのファースト・アルバム『ハード・グルーヴ』。前述の3人に元ジャネイのルネー・ヌーヴィルやATCQのQティップ、ミシェル・ンデゲオチェロ、ジェイムズ・ポイザーを中心としたソウルクエリアンズといった共演ミュージシャンの顔ぶれが物語っているように、ロイ・ハーグローヴがジャズとR&B、ファンク、ヒップホップを同心円上にあるストリート・ミュージックとして捉え、新たな領域(ジャズ・ヒップホップ~ネオ・ソウル)の開拓に取り組んだ渾身作である。今回の9人編成によるロイ・ハーグローヴ's・RHファクターには、前述のルネー・ヌーヴィル(vo、key)、さらに過去3枚のザ・RHファクターのアルバムすべてに参加し、現在はスナーキー・パピーでも活躍しているボビー・スパークス(key)やジェイソン“JT”トーマス(ds)も含まれている。Pファンクをこよなく愛しているロイ・ハーグローヴのファンカーとしての魂が炸裂するステージになることは間違いない。また、初日の“DIZ STAGE”には、ギリシャ人とジャマイカ人の血を引く英国の女性シンガー・ソングライターであるリアン・ラ・ハヴァス、ロサンゼルスを拠点に活動している男女3人によるネオ・ソウル系トリオのムーンチャイルドも登場する。リアンは、ソロとしての出演。よってギターの弾き語りで、スモーキーでありながら瑞々しい彼女の歌声を味わえる貴重な機会だ。
24日の“BIRD STAGE”には、HIROMI duet: feat. Edmar Castanedaが出演する。世界を股にかけて活躍しているピアニストの上原ひろみと、コロンビア生まれのアルパ(南米ハープ)奏者エドマール・カスタネーダによるデュオだ。2人の交流は昨年6月から始まったばかりで、日本では初めてのライヴということになる。公演直前の9月20日には今年6月30日のモントリオール・ジャズ・フェスティバルでの白熱のステージが記録された『ライヴ・イン・モントリオール』がリリースされるが、BNJFでは、同フェスティバルを上回る2人ならではのケミストリーでオーディエンスを魅了してくれることを期待したい。24日の“BIRD STAGE”には、グレゴリー・ポーターも出演する。魂の奥底にまで深く染みこみ、冷えきった心も温めてくれるグレゴリー・ポーターのバリトン・ヴォイスは、潮風に乗ってどこまでも響き渡るだろう。
24日の“DIZ STAGE”のメインアクトは、カマシ・ワシントン。70年代のスピリチュアル・ジャズを受け継ぎつつ、フライング・ロータスやケンドリック・ラマー、サンダーキャットなどと同じ地平に立って、現在進行形ジャズを志向しているテナー・サックス奏者だ。当日はブランドン・コールマン(key)やロナルド・ブルーナーJr.(ds)といったリーダー作をリリースしているメンバーも含む8人編成のバンドを率いてのライヴだけに、前日のロイ・ハーグローヴ's・RHファクターと並ぶ、熱いパフォーマンスを繰り広げてくれるはずだ。また、この日の“DIZ STAGE”には、ジェイコブ・コリアーも出演する。自身による多重録音のアカペラと楽器演奏に、生のヴォーカルと楽器の演奏を次々に重ね、“ワンマン・オーケストラ”とでも呼ぶべき音世界を構築していくその超絶技巧は、まさに唯一無比だ。そしてディアンジェロやロバート・グラスパーなどから厚い信頼を得てきた現代屈指のドラマー、クリス・デイヴが率いるクリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズの出演も決定した。
なお、両日ともに有料エリア外には“On the Corner”という観覧無料ステージが設けられ、ここでは冨田ラボこと冨田恵一率いるT.O.C.BANDやダニ・グルジェル&ノヴォス・コンポジトレス、WONKなどの演奏を楽しむことができる。あえて書き添えておくと、ノヴォス・コンポジトレスのメンバーの中には、サンパウロ新世代を代表するシンガー・ソングライターのト・ブランヂリオーニや凄腕ベーシストのフィ・マロスティカが含まれている。よってブラジル音楽ファンには、声を大にして推薦しておきたい。
Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017 ブルーノートジャズ・フェスティヴァル・イン・ジャパン 2017
○日時:9月23日(祝・土)、24日(日)開場 11:00 開演 12:00
○会場:横浜赤レンガ倉庫特設会場
【9月23日】ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ、デヴィッド・サンボーン&ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ、JUJU with TAKUYA KURODA BAND from NY、ロイ・ハーグローヴ's・RHファクター、リアン・ラ・ハヴァス(ソロ)、ムーンチャイルド、ダニ・グルジェル&ノヴォス・コンポジトレス、T.O.C.BAND、ジャン=ミシェル・ベルナール plays “ラロ・シフリン” ゲスト:畠山美由紀、WONK
【9月24日】ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ、カマシ・ワシントン、上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ、グレゴリー・ポーター、クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ、ジェイコブ・コリアー、スウィングロワーズ、小沼ようすけ×U-zhaan、青木カレン、他