シーンにこういうヒールみたいな人間がひとりいてもおもしろいのかなって――声優アーティストだからこその意匠と自身のメタル愛を敷き詰めたニュー・シングル!
「基本的に女性ヴォーカリストの作品が好きなんですけど、アンサンは、曲もヴォーカルの方が持っている世界観もすごく好きですね。いちばん好きなのは北欧メタルなので、アーク・エネミーとかナイトウィッシュはもちろんなんですが、崇め奉っているのはディサルモニア・ムンディなんです」。
〈まだまだ無知ですが……〉と謙遜しつつ語ってくれたのは、声優アーティスト界でゴリゴリのメタル・サウンドを轟かせて注目を集めている喜多村英梨。7枚目のシングル“掌 -show-”は、彼女が仄姉妹役で出演しているTVアニメ「シドニアの騎士」のエンディング・ナンバー。対話不能の異生物・奇居子(ガウナ)との攻防を描いた壮大なSF大作と、疾走感のあるハードなサウンドは相性抜群! その見事な化学反応は、喜多村が本編に出演している声優であり、原作のファンであるからこそ生まれたものだ。その話しぶりからも、彼女がこの曲に込めた熱が伝わってくる。
「喜多村英梨の武器だと自負しているんですけど、曲を作るよりも先に、アフレコ現場でいろいろなヒントを得ることができるんです。それで、最初は壮大な物語をイメージした、海外映画のエンディング曲のようなものにしようと思っていたんですけど、躍動感のあるアニメって、〈オープニング曲はガツンとしていて、エンディング曲はしっとり終わる〉みたいなイメージがあると思うんですね。でも、原作を読み進めていくほど、魂を弔うように静かに終わるというより、戦いは一旦終わったけど絶望はまだ続いていて、そのなかでも前を向くようなもののほうがいいんじゃないかなと思ったんです。原作の弐瓶勉先生やアニメの監督にもOKをいただけたので、使命感を持って、〈エンディング感のあるサビでありながら、バラードではなく、なおかつ続きを感じさせるもの〉という難しいところに挑戦してみました」。
歌詞は作曲者の河合英嗣と共同執筆。作品の登場人物や印象的なワードを散りばめたものになっている。
「河合さんの仮歌詞には〈そうそう!〉って思うところと〈あれ?〉と思うところがあったんですが、それは私が声優として現場に入っているからそう思ったのかなって。それで、〈歌詞はこういうイメージなんですけど……〉って書いて送ってみたら、〈よければいっしょに書きませんか?〉と言っていただけて。そこから歌詞を〈シドニア語〉に書き直させてもらったんですけど、結果的に河合さんの歌詞より多くなってしまって……(苦笑)。本当にすみません!と思ったんですが、〈とても良いと思います〉と言っていただけたので安心しました」。
カップリングは、シンフォニック〜ゴシック〜プログレッシヴ・メタルなどをミックスしたサウンドのなかで、強烈なグロウルを響かせる“Greedy; (cry)”。愛憎渦巻く情念が綴られた歌詞は、喜多村が手掛けたものだ。
「〈こういう曲をやりたい!〉ってずっと思っていたんですけど、いただいた(タイアップなどの)チャンスのなかで、無理矢理やるのは違うかなと思っていて。でも、今回だったらできると思いましたし、私のこういう部分を〈良いね!〉と言ってくださる周りの環境に、どっぷり甘えてみました。それに、声優でアーティスト活動をしている女性のなかでも、ここまでドス黒いことをする人はいないし(笑)、業界的にもこういうヒールみたいな人間がひとりいてもおもしろいのかなって思っていて。このジャンルを突き進んで、確立できたらいいなと思っています」。
▼喜多村英梨の作品
左から、2012年作『RE;STORY』、2014年作『証×明 -SHOMEI-』、2014年のライヴDVD「STARTING STORY LIVE TOUR 2013」(すべてスターチャイルド)
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▼関連作品
左から、アンサンの2010年作『Clinic For Dolls』(Mystic/Avalon/Marquee)、アーク・エネミーの2011年作『Khaos Legions』(Trooper)、ナイトウィッシュの2011年作『Imaginaerum』(Roadrunner)、ディサルモニア・ムンディの2009年作『The Isolation Game』(Coroner)
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