常に時代に挑戦しつつ、真摯に独創性を追求する――主宰者の音楽性自体と共振する面々が集ったレーベルの5年間を、作品で振り返ってみよう
world's end girlfriendが2010年に立ち上げたVirgin Babylonの5周年を記念したコンピ『ONE MINUTE OLDER』が完成した。当初は自身のものと共に、夢中夢やJoseph Nothingといった地下シーンで交流の深い面々の作品を発表していたが、徐々にネット発のアクトにも手を広げ、Bunkai-keiを率いるGo-qualiaをはじめ、最近ではcanooooopyやBOOLといった個性派を次々と輩出。さらにはBandcampを使った投げ銭制で無名のアーティストを紹介する〈Virgin Babylon Selected Works〉をスタートさせるなど、その存在は実にユニークだ。
VARIOUS ARTISTS ONE MINUTE OLDER - Virgin Babylon Records 5th Anniversary Virgin Babylon(2015)
『ONE MINUTE OLDER』にしても、非常にコンセプチュアルな作品になっていて、〈1分の音楽〉をテーマに、〈45秒以上、90秒以内〉という条件のもと、各アーティストに楽曲制作を依頼。結果的に、50組ものラインナップが収録されている。そのなかには、レーベルの所属アクトはもちろん、COM.AやDE DE MOUSE、あらかじめ決められた恋人たちへといった面々から、N-qiaとしてVirgin Babylonから作品を発表しているSerph、wegのライヴ時のサポート・メンバーを含むOVUM、昨年に久々の新作をリリースしたPianaといった名前も。
加えて〈Virgin Babylon Selected Works〉の参加者や、公募で選ばれた4組も収録(なお、最終選考まで残った残り20組の楽曲は、『ANOTHER ONE MINUTE OLDER』としてフリー・ダウンロードできるようになっている)。主宰自身はwegとworld's end boyfriendの名義で2曲を提供していて、1曲のなかにジェットコースター的な展開を盛り込んだ前者と、ジワジワと盛り上がって最後にバーストする後者の対比がおもしろい。
恐らくは、インスタントに音楽が聴き流されてしまいがちな現代を皮肉ったであろう本作が象徴しているように、常に時代に挑戦しつつ、そのうえで真摯にオリジナリティーの強い音楽を追求するVirgin Babylonは、いまもっともおもしろいレーベルのひとつだと言えよう。