微生物の遺伝子を組み換えようとしてテロリストの容疑をかけられる音楽家を主人公にしたSF、なのだが引用される夥しい数の音楽作品だけが実在する。言葉で提示できない領域の音楽だけが、実社会からコラージュされている不思議なフィクションだ。モーツァルトに始まり、メシアン、ケージなどなどのクラシック~現代音楽や、ロカビリーにドゥワップ、そしてやっぱりでてきたレディオヘッドなどなどの作品に向けられたこの作家の言葉に、フレーズに多分、おそらくワクワクしない音楽ファンはいないのではないだろうか。そういう意味で、日本の古川日出男を思い出させる。音楽を聴き飽きたなら、読んでみたらどうだろう。