音楽への衝動と本気の情熱を胸に、険しい道も厭わず進むロック・デュオが新作で手に入れたのは、その未来を照らす夜明けの太陽!

 「突っ走った感じですね。“褒めろよ”を出したのが3年前に思えるくらい」(松尾レミ、ヴォーカル/ギター)。

 シングル2枚と初のフル・アルバム『SUNRISE JOURNEY』をリリースし、東京では2度の単独公演(5月の東京キネマ倶楽部と10月の赤坂BLITZ)を成功。〈フジロック〉〈朝霧JAM〉などの大型フェスでも大勢の聴衆を沸かせた2015年を振り返って松尾が言う通り、GLIM SPANKYはメジャー・デビュー2年目のその年を、勢いを増しながら駆け抜けた。そして次なる攻めの一手となるのがセカンド・ミニ・アルバム『ワイルド・サイドを行け』。制作は先述のアルバムを出した直後に開始されたそうだ。

GLIM SPANKY ワイルド・サイドを行け ユニバーサル(2016)

 「いままでは曲作りの期間がそれなりにあったんですけど、今回に関してはアルバムのリリース・ツアーの合間に書かなければならなかった。だからライヴの後にホテルで曲を書いて、地下の駐車場でハイエースをスタジオ代わりにして深夜に歌って送るとか、そんな作り方で。悩んでる時間もなかったんですけど、それだけにダイレクトに衝動を反映させることができたと思います」(松尾)。

 まさしくその衝動を疾走するメロディーに乗せ、激しくドライヴさせていくのが表題曲“ワイルド・サイドを行け”。爆発力がありながらキャッチーさも有しているあたり、これぞGLIM SPANKYと言いたくなるものだ。

 「“褒めろよ”“リアル鬼ごっこ”と勢いのあるシングルを2枚出したので、次は(本作収録の)“NEXT ONE”のように重いビートのものを表題曲にして出そうという考えも最初はあったんですけど、やっぱりその前にこのバンドはこういう曲調が得意なんだってことをもう一回ちゃんと印象付けたかったんですよ。次に向けて一歩踏み出すためには、勢いと派手さがある曲じゃないとダメだろうと。僕としてはとにかくフレーズがキャッチーであることにこだわりました。とはいえ、やらしいキャッチーさではなくて。〈どう聴いてもロックとしか言えないっしょ? どーだ!〉ぐらいの感じで弾いてましたね」(亀本寛貴、ギター)。

 一方、松尾が同曲で特にこだわったのは、シタール風のギターや音の逆回転でサイケな情景を立ち上がらせた間奏部だという。

 「テイム・インパラとかクーラ・シェイカーみたいなサイケ感。それとビートルズの“Being For The Benefit Of Mr. Kite!”にある遊園地みたいな音のイメージを取り入れたかったんです。プロデュースしてくれた亀田(誠治)さんはビートルズ・マニアなので、そこはずいぶん助けられましたね」(松尾)。

 そのように巧みな場面転換を見せながら自分たちらしいやり方で道を切り開かんとする意志を歌ったこの表題曲を筆頭に、ほかの4曲もみないまの2人がどこに向かってどう進もうとしているかを表したもの。

 「海外のサッカーでホワイト・ストライプスの曲(“Seven Nation Army”)をみんなが〈お~おおおお~〉って歌ってる、あのスタジアム感みたいなものを出したかった」(亀本)というブラインドサッカー日本代表の公式ソング“NEXT ONE”、「シャッフル・ビートに挑戦しながら、いかにポップなメロディーをつけて、いかに私が常々抱いているキッズの精神を歌えるかが勝負だった」(松尾)という初期のブラーに通じる痛快曲“BOYS & GIRLS”、「目標は誰よりも大きく持って、太陽をめざすくらいの心意気でいこうという気持ちを歌いたかった」(松尾)というオーガニックで晴れやかな“太陽を目指せ”と続き、同世代の友人でもあった才能豊かなミュージシャンの自殺をきっかけに歌詞を完成させたというミディアム・ロックの“夜明けのフォーク”の最後、〈明日へ生きていこう〉という言葉が歌われて本作は幕を閉じる。

 「私が本気で思っているからこそ歌にできた言葉。たとえ、クサいと思われそうな言葉であっても、私は〈本気で届けてやる!〉って気持ちで、それをここに置いたんです」(松尾)。

 この思いの強さ。熱量。信じる気持ち。2人の未来はそれによって切り開かれる。