音楽への衝動と本気の情熱を胸に、険しい道も厭わず進むロック・デュオが新作で手に入れたのは、その未来を照らす夜明けの太陽!
「突っ走った感じですね。“褒めろよ”を出したのが3年前に思えるくらい」(松尾レミ、ヴォーカル/ギター)。
シングル2枚と初のフル・アルバム『SUNRISE JOURNEY』をリリースし、東京では2度の単独公演(5月の東京キネマ倶楽部と10月の赤坂BLITZ)を成功。〈フジロック〉〈朝霧JAM〉などの大型フェスでも大勢の聴衆を沸かせた2015年を振り返って松尾が言う通り、GLIM SPANKYはメジャー・デビュー2年目のその年を、勢いを増しながら駆け抜けた。そして次なる攻めの一手となるのがセカンド・ミニ・アルバム『ワイルド・サイドを行け』。制作は先述のアルバムを出した直後に開始されたそうだ。
「いままでは曲作りの期間がそれなりにあったんですけど、今回に関してはアルバムのリリース・ツアーの合間に書かなければならなかった。だからライヴの後にホテルで曲を書いて、地下の駐車場でハイエースをスタジオ代わりにして深夜に歌って送るとか、そんな作り方で。悩んでる時間もなかったんですけど、それだけにダイレクトに衝動を反映させることができたと思います」(松尾)。
まさしくその衝動を疾走するメロディーに乗せ、激しくドライヴさせていくのが表題曲“ワイルド・サイドを行け”。爆発力がありながらキャッチーさも有しているあたり、これぞGLIM SPANKYと言いたくなるものだ。
「“褒めろよ”“リアル鬼ごっこ”と勢いのあるシングルを2枚出したので、次は(本作収録の)“NEXT ONE”のように重いビートのものを表題曲にして出そうという考えも最初はあったんですけど、やっぱりその前にこのバンドはこういう曲調が得意なんだってことをもう一回ちゃんと印象付けたかったんですよ。次に向けて一歩踏み出すためには、勢いと派手さがある曲じゃないとダメだろうと。僕としてはとにかくフレーズがキャッチーであることにこだわりました。とはいえ、やらしいキャッチーさではなくて。〈どう聴いてもロックとしか言えないっしょ? どーだ!〉ぐらいの感じで弾いてましたね」(亀本寛貴、ギター)。
一方、松尾が同曲で特にこだわったのは、シタール風のギターや音の逆回転でサイケな情景を立ち上がらせた間奏部だという。
「テイム・インパラとかクーラ・シェイカーみたいなサイケ感。それとビートルズの“Being For The Benefit Of Mr. Kite!”にある遊園地みたいな音のイメージを取り入れたかったんです。プロデュースしてくれた亀田(誠治)さんはビートルズ・マニアなので、そこはずいぶん助けられましたね」(松尾)。
そのように巧みな場面転換を見せながら自分たちらしいやり方で道を切り開かんとする意志を歌ったこの表題曲を筆頭に、ほかの4曲もみないまの2人がどこに向かってどう進もうとしているかを表したもの。
「海外のサッカーでホワイト・ストライプスの曲(“Seven Nation Army”)をみんなが〈お~おおおお~〉って歌ってる、あのスタジアム感みたいなものを出したかった」(亀本)というブラインドサッカー日本代表の公式ソング“NEXT ONE”、「シャッフル・ビートに挑戦しながら、いかにポップなメロディーをつけて、いかに私が常々抱いているキッズの精神を歌えるかが勝負だった」(松尾)という初期のブラーに通じる痛快曲“BOYS & GIRLS”、「目標は誰よりも大きく持って、太陽をめざすくらいの心意気でいこうという気持ちを歌いたかった」(松尾)というオーガニックで晴れやかな“太陽を目指せ”と続き、同世代の友人でもあった才能豊かなミュージシャンの自殺をきっかけに歌詞を完成させたというミディアム・ロックの“夜明けのフォーク”の最後、〈明日へ生きていこう〉という言葉が歌われて本作は幕を閉じる。
「私が本気で思っているからこそ歌にできた言葉。たとえ、クサいと思われそうな言葉であっても、私は〈本気で届けてやる!〉って気持ちで、それをここに置いたんです」(松尾)。
この思いの強さ。熱量。信じる気持ち。2人の未来はそれによって切り開かれる。
ワイルド・サイドを行く同時代の才能たち

COURTNEY BARNETT Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit Milk!/TRAFFIC(2015)
シンガー・ソングライターだが、グランジ成分多めのバンド・サウンドで投げ出すように歌う、青い瞳のコートニー・バーネット。荒ぶるギター・リフと、やさぐれと叙情の間を行き来する歌い方に真実を宿すあたりが、松尾との共通項か。
女子5人組によるライヴの熱を見事に盤に反映させた3作目。60~70年代のオーセンティック・ロックをルーツに持ちはするが、きっぱりと〈反懐古主義〉。2010年代のリアリティーを持った音と歌を生々しく、そして言葉もハッキリ聴かせるのがGLIMと共通するところだろう。

いま世界でもっとも松尾の歌声に近い歌手と言えばズバリこの人。グラミーの〈ベスト・ロック・パフォーマンス〉部門などにノミネートされているLA出身の26歳で、歪んだギターに絡ませるハスキーなダミ声の迫力が凄い。ブルース・ロックからカントリーまで曲調も幅広く、GLIM好きは必聴だ。

先頃の単独来日公演では、2015年の〈サマソニ〉出演時からの著しい成長を感じさせたUKの4人組バンド。エリー・ロウゼル(ヴォーカル)のクールさとワイルドさの瞬間的な切り替えや、ある種の妖気を漂わせながらもポップに音を放つそのやり方が、GLIMとの共通項。

60年代サイケデリアを継承しつつ、2010年代のモダンな音にして鳴らすことのできるバンドの3作目は、シンセとファルセットと音響によってダンス方面に急接近。なお、前作『Lonerism』は中期ビートルズ的なサイケ感も有していて、GLIMもその手法に影響を受けたところあり。

ミック・ジャガーやBB・キングといった大物がこの男をステージに招いたのは、彼が先達へのリスペクトを保ちつつもガレージやライト・ソウルなどの要素を現代的に取り込んだギターを聴かせるから。それは、亀本寛貴にも見受けられる姿勢だったり。
GLIMとはインディー時代に何度も共演しており、2人にとっては同士とも言える日本の4人組。1年半ぶりとなるこの2作目は、定評あるソングライティング力にますます磨きをかけ、ビートルズやELOに通じるサウンド&ハーモニーもキラリと光る。70sロックの香り、プンプン。

新世代UKバンドの大本命と言われる平均年齢22歳の彼らは、いまのUKのロック・シーンには珍しくドラマティックかつ明快なメロディーと歌の力で堂々勝負。GLIMもそうだが、猪口才な仕掛けなど一切せず、しなやかな野生で衝動を音にしているのがいい。


