およそ2年前。初めてHOWL BE QUIETに会った時、彼らはすでに注目を集める存在だった。泣けるMVとして話題になった“Merry”“GOOD BYE”を含むファースト・アルバム『DECEMBER』は高い評価を受けて、続く『BIRDCAGE.EP』も、ピアノ&ヴォーカルというスタイルをより活かし、躍動感溢れる作品になった。万事快調。傍からはそう見えていたが、バンドはその時、壁をぶち破るためにもがいていたのだと、ソングライターの竹縄航太は回顧する。

 「何かとカテゴライズされることが多かったんですよ。〈泣けるバンドですね〉とか。言葉自体は嬉しいけれど、それだけでひと括りにされるのは本意ではなくて。ライヴでアッパーな曲をやっても求められてない感があって、みんなバラードを待ってるみたいな。その状況を打開したかったんですよね」(竹縄)。

 カテゴライズされ、整理されてしまうことへの疑問。それはやがて自分たちを取り巻くシーンへの疑問へと繋がってゆく。

 「当時のバンド・シーンにまぎれたくなかったんですよ。それはいまでも思ってるんですけど。みんな4つ打ちで、BPMが速くて、お客さんが演者に背を向けて騒いでる。それはそれでいいけど、俺は歌を伝えたい、歌で感動してほしい、歌を共有したい。歌がちゃんとそこにあったうえで、もっと楽しいことを共有したかったんです」(竹縄)。

HOWL BE QUIET MONSTER WORLD ポニーキャニオン(2016)

 話を現在に戻そう。HOWL BE QUIETのメジャー・デビュー・シングル“MONSTER WORLD”は、眩い光を放って疾走する、完全無欠のポップ・チューン。その華やかさは、YouTubeの再生回数をすごい勢いで伸ばしているMVを観れば一目瞭然だ。それは昨年の春、『BIRDCAGE.EP』のさらに先へ行くために満を持して書かれた一曲だった。だが、当時メジャー・デビューの話はまったくなかったという。

 「それは声を大にして言いたい(笑)。メジャー・デビューのために書いた曲じゃないんですよ。俺たちが本心から、核の部分は変えずに、周りをもっと新しく変えていきたいという思いの表現が、今回の作品なんだということは本当に伝えたい」(竹縄)。

 「(初めて聴いた時は)前作を上回るカラフルさと、ポップの裏側にあるエグさみたいなものも入っていて、正直びっくりしました。でも、これを竹縄航太が書いてきたことには驚かなかった。〈次のHOWL BE QUIETはここに行くのか〉という驚きと楽しみはありましたけど」(黒木健志)。

 「この曲にいちばん合った音選びを徹底的にやりましたね。8ビートで疾走感があって、思い切り弦を使って華やかで大きなサウンドに……とか。細かい色付けはすごくやりました」(岩野亨)。

 完全EDM仕様の“レジスタンス”、ホーンを入れたグルーヴィーな“Daily Darling”と、カップリング曲の振り切ったアプローチも見事。すべての音に迷いがない。

 「バンドだからこれができないとか、つまんないなと思う。表現のためには自由に踊ってもいいし跳んでもいい。TVのヴァラエティー番組に出たっていいよね?」(竹縄)。

 もともと隔てを意識することなく音楽を聴いてきた竹縄のソングライターとしての才能が開花した本作。その視線はもう、〈バンド・シーン〉に捉われてはいない。めざすは豊かで広い〈ポップ・ミュージック〉の沃野だ。

 「とかワン・ダイレクションとか、すごいカッコイイなと思うんですよ。男が見てもキラキラしてる。音楽もキャラも好き。ああいう存在になりたいです」(黒木)。

 「単純にカッコイイし、おもしろい。そこに蓋をするのも違うでしょ?って」(岩野)。

 「かといってロックをやらないわけじゃない。発想や身体の感覚を自由にして、これからおもしろいと思うことを何でもやっていこうと思ってます」(竹縄)。

 


HOWL BE QUIET
竹縄航太(ヴォーカル/ギター/ピアノ)、黒木健志(ギター)、橋本佳紀(ベース)、岩野亨(ドラムス)から成る4人組。2010年に神奈川で結成。間もなく東京を中心に精力的なライヴ活動を行うようになり、2013年10月にタワレコ限定シングル“GOOD BYE”、12月に初の全国流通盤となるファースト・アルバム『DECEMBER』をリリース。後者は〈タワレコメン〉にも選ばれて注目を集める。2014年は〈TREASURE05X〉ほか大型イヴェントにも多数出演し、11月に5曲入りのEP『BIRDCAGE.EP』を発表。2015年には初の東名阪ツアーを成功させ、さらに認知を広げるなか、このたびメジャー・デビュー・シングル“MONSTER WORLD”(ポニーキャニオン)をリリース。