古巣に戻った社主が踏み出すレーベルの新たな歴史
ドイツの楽譜出版社として創立され、独立レーベルとしても広く知られるヘンスラー社。その創業一族の家系で、現在の社長であるギュンター・ヘンスラー氏にお話を伺った。一時、同レーベルを離れ、2004年からプロフィール・レーベルを興し活躍、その後古巣を買い戻し、2015年9月からプロフィール=ヘンスラーとして活動を広げている。
――アイディアや企画の源は?
「プロフィールでは、実は日本のキング・インターナショナルから提案されたものが多いのです。シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)と一緒に仕事をすることになったのもそうでした。コリン・デイヴィスやブロムシュテット、ハイティンクといった名だたる指揮者と築いてきたSKDの歴史を皆さんに提示したいと思っています。ティーレマンとは滅多に演奏されることのないワーグナーの 《使徒の愛餐》も録音しました。今後は、シンフォニーに重点を置きつつ、協奏曲やオーケストラ作品、それにオペラも加えてゆきます」
――具体的なリリース予定を伺います。CPEバッハの大選集が予定されているそうですが、どのようなペースで進められて、いつ頃完成予定なのでしょうか?
「それを答えるには、予言者にならないと(笑)。最初の大きなボックスは50枚組です。初期の作品など収録しないものもありますが、最終的には、この作曲家にとって世界で一番大きな選集になるでしょう」
――プロフィールからは今後何が出てくるのですか?
「7枚組のテンシュテット・エディション(バイエルン放送響)、デルジャヴィナのバッハ、チョン・ミョンフンの《エロイカ》、ジュリーニの《タウリスのイフィゲニア》、35枚組のカール・リヒター・エディションなどがあります。クルト・ザンデルリングと北ドイツ放送響によるマーラーの交響曲第9番は目玉のひとつですね」
――2014年に本誌が以前のスタッフにインタヴューした際、日本にファンが多いから考慮すると語っていたヨハンナ・マルツィが出されますね。同じくプロフィールから出るテンシュテットとアルゲリッチのショパンとシューマンというのは特に楽しみです。これはまだ彼が北ドイツ放送響のシェフを務めていた80年代初めの録音です。
「ヘンスラーからは、今年上半期の予定ですと、先のCPEバッハのボックスの他に、フローリアン・ウーリヒのシューマン続編、シュテッケルのCPEバッハなどが出ます。FPツィンマーマンのモーツァルトの協奏曲の続編や、トーマス・ファイのハイドン:ロンドン交響曲集も確実に音楽的に素晴らしく、喜んでいただけるはずです。室内楽にも力を入れてゆくつもりですが、このジャンルに関しては音楽家の希望に合わせ、両レーベルを使い分けるつもりです」
――ギュンターさんの一押しというのは?
「びっくりするようなレパートリーとしては、ハンス・ロットの交響曲ですね。とても豊かなメロディやハーモニーが使われていることをお伝えしたい。指揮はコンスタンティン・トリンクスです」
――ゲルト・シャラーのブルックナーも気になります。
「彼はミュンヒェン方面では最高レヴェルと既に認められた音楽家です。ドイツではとてもよく売れています。彼のブルックナーは日本のリスナーにもとてもよく合うと思いますよ。キャラガン版で録音しているのもポイントで、シューベルトの《未完成》も彼の4楽章完成版を用いています」
――昨今はCDがあまり売れないという状況になってしまっています。リリース数は今後もキープされるのでしょうか?
「各レーベルは独立して存在する予定で、毎年それぞれ50枚ずつを考えています。もちろん音楽業界はとても大きく変わってきましたが、音楽で感動する人、音楽に愛情を持っている人はいなくなることはありません。ですので会社はもっと大きくするつもりですよ (笑)」