デイヴ・ダグラスのリーダー・シップと、ユース・クインテットの成熟が結実した意欲作
2012年にジョン・イラバゴン(ts,ss)、マット・ミッチェル(p)、リンダ・オー(b)、ルディ・ロイストン(ds)ら若手の精鋭で編成した、デイヴ・ダグラス(tp)のニュー・クインテットは、『be still』(2012年)、『Time Travel』(2013年)の2枚のアルバムをリリース。ダグラスの50歳を記念した、全米50州でのギグを巡り、タイトなサウンドを構築してきた。クインテットの活動と並行して、様々なフォーマットで自らのレーベルGreenleafを拠点に、ダグラスは5枚の作品を、この3年間にリリースした。その多彩な活動を、クインテットにフィードバックしたのが本作だ。このアルバムは癌で逝去したダグラスを音楽に導いた兄に捧げられている。
オープニングを飾るタイトル曲の 《Brazen Heart》は、エクスティック・ミュージック・フェスティヴァルの委託で、NYダウンタウンのワールド・トレード・センター記念公園で演奏されたラージ・アンサンブル作品を、クインテットでプレイした。「すべてを克服するのは愛である」という、ダグラスの信念が貫かれる一曲である。《Deep River》、《There is a Balm in Gilead》はダグラスが近年好んで採り上げるスピリチュアル・ソング。兄への追慕とチャーリー・ヘイデン(b)へのトリビュートが、リリカルなメロディ・ラインに宿る。
オリジナル曲はアグレッシヴな 《Lone Wolf》、《Wake Up Claire》、内省的な《Pyrrhic Apology》など、このグループのキャパシティが大きく拡張したことを示す。メンター(師匠)の影響下で、若きアーティスト達が成長し、ダグラスを大きく刺激するようになった過程が、聴きとれる。 NYのジャズ・スタンダードでのアルバム・リリース・ギグ8セットもダウンロード販売されている。このクインテットの現在を知る、ドキュメントである。