スペインのマドリードから世界に飛び出してきたガールズ・ガレージ・バンド、ハインズが、日本盤がリリースされたばかりのデビュー・アルバム『Leave Me Alone』を引っ提げて初来日。1週間の滞在中、プロモーションに精を出しながら計3回のライヴを行った彼女たちは、世界各地をツアーしながら鍛えて上げてきたライヴ・バンドとしての実力を日本のファンに見せつけた。ここでは、観客全員を笑顔にした4月18日の東京・新代田FEVER公演の模様をレポートする。

【インタヴュー】ハインズがついに来日! いま最注目のガールズ・ガレージ・バンドが語るステージへのこだわり、成功の裏のプレッシャーと葛藤

オープニング・アクトとして登場した、注目度上昇中のギターとドラムの2ピース・バンド、ドミコが〈いっぱい呑んでってください〉と30分ほどの熱演を締め括る頃には、噂のガールズ・バンドを自分の目と耳で確かめようと集まった人たちで会場内はいっぱいに。世界中で話題のハインズがついに日本へやってきたのだ。しかも、〈ボナルー〉〈グラストンベリー〉〈レディング/リーズ〉〈ベスティヴァル〉他、名立たる夏フェスに出演が決まっている彼女たちが今年、日本の夏フェスに出演することはほぼ不可能。次にいつハインズのライヴを観られるのかわからないんだから、この機会を逃すわけにはいかない。

そんな期待と興奮がドミコによる熱演の余韻と入り混じり、スタンディングのフロアが熱気でむんむんしているなか、セット・チェンジが終わったステージにハインズのメンバーたちが現れ、みずから楽器をセッティング。そのまま演奏に突入するかと思いきや、〈ちょっと待っててね〉と言い残して、一旦引っ込むと、5分ほど観客を焦らす。そして今度は威勢良く飛び出してきて、『Leave Me Alone』には未収録の“Warning With The Curling”でパフォーマンスが始まった。

〈Hola!! How are you doing? ワタシタチハ ハインズデ、デ、(うーん、何だっけ?)……デス!〉

ちょっとグランジ風味もあるスロウ・ナンバーを演奏し終えたところで、カルロッタ・コシアルス(ヴォーカル/ギター)が日本語の挨拶に挑戦。早速、客席から歓声が飛び、〈オドロウヨ!〉とアデ・マーティン(ベース)が笑顔で答えると、〈1-2-3-4!!〉とバンドは“Trippy Gum”に雪崩れ込む。カルロッタとアナ・ガルシア・ペローテ(ヴォーカル/ギター)がアンニュイな歌声で掛け合う演奏は〈Hoo Woo Woo〉というキュートなコーラスをきっかけにテンポ・アップした。

〈オドロウヨ! オドロウヨ!〉

お気に入りの言葉なのか、口々に言い合い、笑顔でアイコンタクトを取りながら元気いっぱいに演奏する4人に〈カワイイ!〉という声が飛び、“Warts”では〈Parabarabara Ba Ba Ba〉というコーラスを観客も一緒になって歌っていた。

緩急自在の演奏は、4人の息がぴったり合っているからこそ。それを満面の笑みでドシッと支えるアンバー・グリムベルゲンのドラムも聴きどころだ。1年で133本(2015年の実績)というライヴの本数は決して伊達ではない。誰よりも演奏することを楽しんでいる姿こそが、ハインズが世界中の人々を魅了してきた理由だとこれまで思ってきたが、彼女たちの魅力はそれだけではなかった。

演奏の熱量がグッと上がった“Easy”以降、 演奏の激しさがどんどん増していった後半の流れにはびっくりさせられたものだ。〈アデ!〉というアナの掛け声を合図に客席から〈アデ! アデ!〉という声が飛ぶなか、アデが奏でる印象的なベース・ラインで始まった“Bamboo”を皮切りに、“San Diego”“Garden”と畳み掛けたバンドの熱演に応えるようにステージ前の観客が暴れはじめると、熱狂と狂騒が会場全体に広がっていく。かわいいだけでも、演奏を楽しんでいるだけでもない。この夜のハインズからは、観客を圧倒してやろうという気迫が感じられた。音楽とお互いを信じる4人の力だけを頼りに我流で世界に戦いを挑んでいるバンドの姿を、この日、筆者ははっきりと観ることができた。それは、以前に観た2回のライヴでは体験できなかったことだ。

――なーんてことを考えていたら、メンバー紹介をきっかけにメンバーそれぞれへ声援が飛ぶなか、彼女たちはポーズを取って撮影タイムが始まってしまうんだから、ああ、この子たちはあくまでも自然体で、アルバムのタイトル通り、いつでもやりたいようにやるわけだと改めて納得。〈Everybody! Ready for odoroyo!?〉という掛け声で始まったラストの“Castigadas En El Granero”では、イントロのサビでカルロッタ、アナ、アデの3人がメタル・バンド風のフォーメーション・プレイを見せる悪ノリで客席を沸かせると、アンコールでは地元の先輩、パロッツThe Parrots)とのスプリット・シングルでカヴァーしていたヘッドコーツの“Davey Crocket”を披露。〈Gabba Gabba Hey!!〉と全員で歌いながらダメ押しで盛り上げると、1時間のライヴを締め括った。