オフショアの日は波乗りして、そうじゃない日はグルーヴに乗る――
気ままな日常から偶然生まれた特別な音。この輝きは本物だ!

 型通りに生きたってつまらない――そんな考えを持つイギリスとオーストラリア生まれのサーファーたちが、何かに導かれるようにヨーロッパ有数のサーフ・スポット、フランス南西部のソール・オスゴールへ辿り着いた。そして2013年、見ず知らずの4人がたまたま楽器を演奏できたことから、趣味半分でバンドを結成。サンセット・サンズの始まりは、ざっとこんな感じだ。彼らがいま、音楽シーンで大きな成功を収めようとしているのだから、人生って何が起きるかわからない。

 「僕自身、もともとは1週間の旅行のつもりだった。他のメンバーもみんな旅行で来ていただけ。誰もこれといったプランなんて持っていなかったんだ」(ロリー・ウィリアムズ、ヴォーカル:以下同)。

 彼らがグループを組んでまず考えたのは、冬の期間中にアルプスのスキー・リゾートへ行き、スノーボードを楽しみながらコピー・バンドとして小銭を稼ぐことだった。そして、ザ・フービートルズラモーンズキングス・オブ・レオンなどのカヴァーが観光客の間で評判になりはじめると、〈型通りにはなりたくない〉を身上とする4人は、それらの曲に自分たちなりのアレンジを加えるようになっていく。

 「そうしたら〈これは君たちの曲なの?〉って訊かれるようになった。で、オリジナル曲を作らなきゃという気になってきたんだ。“She Wants”が出来上がった時、僕らは何かを持っていると思ったよ!」。

 気まぐれなミューズが4人にニッコリと微笑んだようだ。その後、自主リリースしたEP『Le Surfing』を足掛かりに、2014年6月にポリドールと契約。同年の暮れにはBBCの〈Sound Of 2015〉にイヤーズ&イヤーズジェイムズ・ベイと並んでノミネートされ、2015年の春頃になるとUKツアーが軒並みソールドアウト、さらにはイマジン・ドラゴンズの前座にも抜擢……と、トントン拍子で事が運んでいく。

SUNSET SONS Very Rarely Say Die French Exit/HOSTESS(2016)

 でも、やっぱり自由人気質はなかなか抜けないようで、新たにレーベルを作り、ファースト・アルバム『Very Rarely Say Die』はそこからのリリースとなった。グラミー受賞経験もあるジャクワイア・キングをメイン・プロデューサーに迎えた本作には、ベン・フォールズ風の陽性ピアノ・ロックや、マルーン5に汗臭さを加えたようなファンク・ポップなどを収録。ダイナミックなアンサンブルやロリーのシャガレ声にワイルドな魅力を感じる一方で、どこかメランコリックかつセンティメンタルな印象も受けるのは、グループ名から窺える通り、眩い昼間の太陽よりも海に沈む夕日にロマンを感じ取る感性が、この4人に備わっているからだろうか。

 「スタジオに入ったら、〈こうしてみよう!〉〈これをやったらおもしろいんじゃない!?〉とどんどんアイデアが出てきた。そこにアルコールも入っていき、酔っ払いながら〈あれもやってみよう!〉〈これ最高じゃないか!〉っていろいろ試したものが、最終的にアルバムとしてまとまったよ。今作には予定外の要素やその時々の閃きを捉えたものが収められていて、そこが素晴らしいと思う。僕らを象徴するような作品になっているんじゃないかな」。

 運命の悪戯みたいなものから繋がった不思議な縁。それをどう生かすかは彼ら次第だ。でも、ハプニングを楽しみ、人生を謳歌しているこの4人ならきっと大丈夫。自分たちが誇りに思えるデビュー・アルバムを作り上げたサンセット・サンズは、今後ますます注目を集めていくことだろう。『Very Rarely Say Die』のリリース後、バンドのスケジュールはしばらくツアーでぎっしり埋まっている。