And Summer Club
ヘヴィーでハワイなパンクと共に過ごす最高の夏!

 KiliKiliVilla生き埋めレコーズのコンピへ参加し、後者からは単独音源も発表。じわじわとその名を広めてきた大阪発、92~93年生まれの4人組、And Summer Clubがファースト・アルバム『HEAVY HAWAII PUNK』をリリースする。録音とミックスは今春の7インチ“Sufer Girl”と同様にneco眠る森雄大が担当。彼には「演奏している部屋の生の空気感が伝わるような音」(角田健輔、ヴォーカル/ギター:以下同)をリクエストしたという本作、表題はバンドが以前から標榜しているワードだが……そもそも〈ヘヴィー・ハワイ・パンク〉とはどういう意味?

 「昔、THE FULL TEENZ伊藤(祐樹)君が僕らのライヴ写真をInstagramに〈Heavy Hawaii Punk〉ってタイトルで載せたことがあって、それがすごく気に入ってずっと使ってます(笑)。伊藤君いわく〈アメリカのヘヴィー・ハワイってバンドのパンク版だから〉らしいです」。

And Summer Club HEAVY HAWAII PUNK こんがりおんがく(2016)

 彼らの特性は、ナイーヴな男女ヴォーカルと軽快に躍る単音のギター・フレーズ、そこにサイケデリックなリヴァーブを重ねたガレージ・パンク。参照/理想としているアーティストを訊ねると、「ウェイヴス、初期のクラウド・ナッシングスティーン・スーサイドベスト・フレンズなどです!」との答えが返ってきたが、フレッシュなサーフ・ガレージ曲が多くある一方で、今作には別の表情もあちこちに。ファニーなミニマル・ポップ“Weekend”、「ベッドで寝ころびながら好きな人のことを考えてる、そんな曲です」というアンニュイなミディアム“Wasted Time”、打ち込みの煌めくダンス・ポップ“Forever Ghost”といった楽曲が並ぶなか、角田が会心の一曲として挙げたのは……。

 「あえて選ぶなら“Always”ですね。歌詞もアレンジも新しい可能性を感じる曲になったので。歌詞は基本的に英語で、この曲ももともと英語の曲でしたが、レコーディング直前に日本語詞に変更しました」。

 その“Always”は、絶妙なテンポ感の3分弱のなかで滑らかな展開を見せるパンク・ロック。音の弾けぶりとは対照的なセンティメンタリズムを孕む彼らの詞世界が、本作でもっとも端的に伝わるのはこの曲かもしれない。今後の変化も匂わせるヘヴィー&ハワイなパンクの第一段階、いま、この個性を聴き逃す手はない。