うつむきがちな彼女はいま、まっすぐに目を向けて〈救い〉を歌う。京都の次代を担う3人組が珠玉の10曲を収めたニュー・アルバム 『Eye』に映した自身とは……

京都の音楽を引っ張っていきたい

 京都発のスリーピース、Hakubi。ヴォーカリストである片桐の心をえぐりながら発しているかのような歌声と、激しいバンド・サウンドでロック・リスナーを魅了してきた。昨年には同郷の先輩、10-FEETのコラボ・アルバム『10-feat』に参加。古くは村八分から最近ではHomecomingsにいたるまで、多くの個性的なアーティストを輩出してきた京都音楽シーンの新たな才能としても注目を集めている。

 「自分たちの音楽を京都っぽいと思ったことはないんですけど、活動初期から現在までマネジメントを担当してくれているライヴハウスのKYOTO MUSEには恩を感じていますし、そこから出てきたバンドとして有名になりたい。自主企画〈京都藝劇〉も京都で開催していますし、10-FEETだったら〈京都大作戦〉、ROTTENGRAFFTYなら〈ポルノ超特急〉、くるりなら〈京都音楽博覧会〉――主催イヴェントをやりながら京都を引っ張っている先輩方のあとに続くバンドにはなりたいです」(片桐、ヴォーカル/ギター)。

 結成は2017年。大学の同じ音楽サークルに所属していた片桐とドラマーのマツイユウキに、地元のライヴハウス・シーンで繋がっていたベーシストのヤスカワアルを加える形でHakubiはスタートした。

 「3人が共通して好きだったのはIvy to Fraudulent Game。My Hair is BadやHump BackなどTHE NINTH APOLLO系のバンドもよく聴いていました」(マツイユウキ、ドラムス)。

 「その頃、僕自身はメタルコアにハマっていて」(ヤスカワアル、ベース)。

 「私は〈鬱ロック〉と呼ばれているようなバンドを聴いて育ったんです(笑)。CIVILIAN、Syrup16g、THE NOVEMBERSとか一人で聴くのが似合う、重たい音楽ばっかりを好きで」(片桐)。

 それらのルーツを混ぜ合わせたヘヴィーでエモーショナルなロックを鳴らしてきた彼女たちにとって、転機となった楽曲は2017年に発表した“夢の続き”。公開から1年を経たずにMVの再生回数が100万回を超えたこの曲が、バンドの名を世に知らしめた。

「“夢の続き”がブレイクしているタイミングでKYOTO MUSEが全国20~30か所を回るツアーを組んでくれたんです。そこで〈ライヴを大事にする〉というこのバンドの基盤が出来上がったと思う」(マツイ)。

「私は最初、“夢の続き”をあまり好きじゃなかったんです。劣等感やイヤなところを隠さずに歌った曲なので、自分では肯定しづらくて。青臭いなとも思ったし。でも、みんながそれを好きになってくれたということは、私と似たようなことを感じてくれていたのかなって、いまでは思います。ライヴで演奏するときも、作ったときの初期衝動を思い出すように歌っていて」(片桐)。

 その後は順調にステップアップを重ね、2021年には「バンドのこれまでの歩みとこれからの可能性を収められた」(片桐)というファースト・フル・アルバム『era』をリリース。同作の発表後にレーベルを現在のポニーキャニオンに移籍し、2022年は配信シングルを積極的に発表した。そうしたリード楽曲を含む全10曲を収録したのが、このたびリリースされる2作目『Eye』というわけだ。

 「アルバム全体を貫くコンセプトは特に設けませんでした。いまどき青写真にこだわりながらアルバムを制作できることとかあるんかな、と思うし」(ヤスカワ)。

 「ただ〈全曲シングルで出せるものにしたい〉という気持ちはありました」(片桐)。

Hakubi 『Eye』 ポニーキャニオン(2023)