SWANS
ミュート移籍を発端にキャリア中でも最高の評価を受けるなか……まさかのバンド解体!?

 アメリカン・オルタナティヴの重鎮、スワンズの2年ぶりとなるニュー・アルバム『The Glowing Man』が発表された。前作『To Be Kind』でミュートに移籍し、25年ぶりの日本盤リリース、22年ぶりの来日公演も実現。大きな盛り上がりを見せているのだが、何と新作と、それに伴うツアーをもって現メンバーでのスワンズは解体し、今後はリーダーのマイケル・ジラ(ギター/ヴォーカル)を中心とした不定形のユニット形式に移行するらしい。結成以来30年を超え、音楽的にはいまが最高の充実期と言って差し支えない彼らに何が起きたのか?

SWANS The Glowing Man Mute/TRAFFIC(2016)

 「これ以上バンドを続けるのはもう無理だと思った。他の5人のメンバーと仕事をするのは好きだし、彼らと共にスワンズのキャリアにおける最高の作品を作ることができた。ただ、ある時点まで行くと、他のメンバーの毛髪1本1本、肌の毛穴1つ1つ、目の虹彩の模様までわかってしまう。1年のうち200日以上ずっと一緒に過ごすわけだから。我々が共に挑むべき冒険はどれもすでに探求してしまった。体力、年齢、さまざまなことが関係している。自分が吸って吐く息も、自分が下す決断に影響している。自分はいま、崖から飛び降りるくらいの覚悟を持って前に進まなければならない。だから、そうすることに決めたんだ」(マイケル・ジラ:以下同)。

 今作は、現編成でのラスト・アルバムになるという明確な自覚のもと制作されたとか。凄まじい集中力と渾身のエネルギーでもって完成したアルバムは、彼らの最高傑作と言っていい濃密さとテンションの高さだ。

 「収録曲は、それまで16か月間も続いたライヴ・ツアーのなかで発展していったものだ。ライヴでの即興から生まれ、その後もさらにライヴで試演し、編曲を繰り返して出来上がったものばかり。ライヴをやる過程で、常に変化を繰り返していったんだ。前回のツアーで出来た曲を、〈優れたアルバム〉という形にすべきだとの思いが当然みんなにあった。それに、この後のツアーも素晴らしいものにしたいという思いだってある。別に我々は喧嘩別れする10代のバンドみたいに、お互い顔も見たくない、というわけではない。もう少し一緒にこの音楽を奏でたいし、もう少しだけ音楽に我々自身を委ねたい」。

 この『The Glowing Man』をリリースした後、ツアーを控えているスワンズ。「アルバムの楽曲をアルバムの通りに演奏するのは絶対にやりたくない。それは極めて安易で愚かで何の刺激もないこと。だから今度のツアーも、どんなものになるかはやってみないとわからない」とジラは言う。絶対に日本には行くと約束してくれたので、それまではアルバムを聴きながら待つことにしよう。