ベン・フロストはメルボルンに生まれ、現在はアイスランドのレイキャビックを拠点として活動を行う音楽家。ポスト・クラシカル系の最重要レーベル、Bedroom Communityの創設者であり、ビョークやムームらとのコラボレーションでも知られるヴァルゲイル・シグルズソンと共に活動し、これまでに『Steel Wound』『By The Throat』をリリース。NME、Wireなどでも高評価を獲得している。そして、ブライアン・イーノ、ビョーク、ティム・ヘッカー、スワンズ、コリン・ステットソンといった錚々たるアーティストと共作を重ねて来た。
ベン・フロストの5年振りとなる新作は本国以外はMuteからというのも興味深いが、キャバレーヴォルテールのリイシューを初めとする再評価、また昨今のテクノシーンに於けるキーワードとしてもインダストリアルが多く語られる様になった事。また、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、パテンら老舗のWARPが2013年に送り出した作品や、トム・ヨークも心酔するアクトレスにも共通するアヴァン・テクノ〜ニューエイジ感。そういった今のエレクトロニック・ミュージックのトレンドを色濃く反映させている様に感じる。金属質な音響やメタリックなビート〜ノイズがアルバムの多くを占めるが、初期衝動的な勢いというよりは、むしろしっかりとアルバムの流れや楽曲が構成されており、この辺りはこれまで活動して来たBedroomCommunityでの体験などが反映されているのかもしれない。
因みにBedroom Communityからはドキュメンタリーフィルムとコンサート映像が収録された2枚組DVDがリリースされており、ベン・フロスト、ヴァルゲイル・シグルズソン、ニコ・マーリーらの貴重な演奏風景を見る事が出来るので、興味のある方は是非見て頂きたい。
先行シングルがピッチフォークにてBEST NEW TRACKに選出、アルバムとしてもBEST NEW MUSICに選ばれた本作。今最も先鋭的で面白いシーンの真っただ中で活躍する本物の異才。シーンと共に注視していきたい。