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【ろっくおん!】第36回 スワンズの83年初作『Filth』が最新リマスター+未発表曲やライヴ音源も収めたDX盤で登場

ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!

 新緑が目に眩しいある日の昼下がり。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。おや、外の陽気にまったくそぐわない、陰鬱な音楽が漏れ聴こえてきますが……。

 

【今月のレポート盤】

SWANS Filth: Deluxe Edition Neutral/Mute(1983)

 

汐入まりあ「おはよう、良い天気だね! わ、何この澱んだ音楽は? スワンズ!?」

戸部小伝太「元会長殿、ご名答です」

汐入「あ、データ先輩!……ではなくて、コデータ君ね。いまだに驚いちゃうよ」

逸見朝彦「まさか弟さんが入部するなんて思いませんでしたよ。見た目もそっくり!」

戸部「愚兄と一緒にしないでいただきたいものです。我輩のほうが身長も2cm高いですし、ロックの嗜好も幅広いですぞ」

逸見「それより、まりあ先輩はスワンズ好きですか? 83年の初作『Filth』が3枚組のデラックス・エディションでリイシューされたんですよ!」

汐入「もちろん好きだけど、この重い鉄塊を引きずっているような音を、天気の良い日に好んで聴きたいとは思わないな~」

戸部「それは嘆かわしいですな。最新リマスタリングが施されたオリジナル曲に加え、未発表曲や貴重なライヴ音源をこれでもかと詰め込んだ本作は、いついかなる時に聴いても素晴らしいでしょうに!」

汐入「う~ん、興味はあるけど……。でもミュートに移籍してから彼らの人気はウナギ登りだよね。一昔前だったらこんな豪華特装盤が出るなんて思わなかったもの」

逸見「そのミュート移籍作『To Be Kind』はPitchforkをはじめ、各方面から絶賛の嵐でしたよね! 僕が巡回しているブログでも軒並み取り上げられていました。もちろん僕はそれ以前から好きですけど」

【参考動画】スワンズの2014年作『To Be Kind』収録曲"Oxygen"

 

戸部「ほほう。まあ、彼らが若い層を取り込んだ一因には、ポスト・インダストリアルダークウェイヴの隆盛と上手くリンクした点が挙げられるでしょうな」

汐入「スラッジ系のメタル・バンドがトライ・アングル勢と組んだりして、インディー暗黒音楽がヘヴィー化した結果、自然とスワンズに近付いたような印象かな」

戸部「より突っ込んで分析すると、そういうことになりますな」

逸見「(スマホをチラ見しながら)そもそも82年にマイケル・ジラがNYで結成したスワンズは、70年代末に勃興した反体制/反メインストリームな地下音楽ムーヴメントとも言うべきノーウェイヴのDIY精神を受け継いだ、先鋭的なポスト・パンク・バンドとして登場しましたよね」

戸部「非常に棒読み感の溢れるご説明、ありがとうございます。ともあれ、『Filth』で開陳された、ひたすら反復を繰り返す鈍重なリズム、徹底的に無機質でメタリックな轟音を放出するギター、メロディーという概念を破壊するような絶唱ヴォーカルといった強烈無比なサウンドは、当時も相当な衝撃だったはず」

汐入「初期ソニック・ユースジョン・スペンサーが率いたプッシー・ガロア、テキサスのバットホール・サーファーズらと共に、〈ジャンク・ロック〉なんて呼ばれていたんだよね」

逸見「ジャンクって〈ゴミ屑〉みたいな意味でしたっけ!? 音を聴くと、何となくわかる気もしますけど。ほかにも〈インダストリアル〉や〈ノイズ〉など、スワンズを形容する言葉は攻撃的でダーティーなものばかりのような……」

戸部「何をおっしゃる。中期の彼らにはフォーキーな曲も多いですぞ!」

逸見「え、そうなの?」

汐入「女性ヴォーカルのジャーボウが在籍していた頃ね。私はあの時代も好きだな」

戸部「流石です。ただ、現在のシーンにおける彼らの影響の大きさは、初期のアグレッシヴさに拠っていますがね」

逸見「影響と言えば、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーもスワンズ・チルドレンだって、ブロガーのLovenoiseさんが書いていたよ!」

【参考動画】ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーの2015年作『Asunder, Sweet And Other Distress』収録曲"Peasantry Or 'Light! Inside Of Light!"

 

戸部「それを言うならブランク・マスや、カナダのスーンズだってスワンズ的ですし、例を出したらキリがないですよ」

汐入「お兄さんも相当だったけれど、コデータ君も本当に詳しいね~。今年のロッ研は安泰な予感!」

戸部「我輩は兄のようなプログレ馬鹿や、ネット情報だけを妄信する輩とは違いますからね」

逸見「あ、あれ、いま僕ディスられた!?」

戸部「気のせいでしょう。それより喉が渇きましたね」

逸見「あはは、そうだよね。よし、僕が特製コーヒーを煎れちゃうぞ!」

 データの弟が入部していたとは驚きですが、果たしてまりあの言う通り今期のロッ研は安泰なのか、それとも前途多難なのか……。 【つづく】

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