街に歌があふれていた60~70年代に想いを馳せた新曲

 1970年代初頭の日本をそよ風のように吹き抜けたポップ・デュオ、トワエモワ。昨年末にデビュー45周年記念アルバムを発表してから半年、新緑の季節にぴったりのニュー・シングルが届けられた。

トワエモワ 欅ストリート/桜紅葉 キング(2016)

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 NHKラジオ『深夜便のうた』としてオンエアされている新曲《欅ストリート》は、長年連れ添った男女が、ケヤキ通りのある街角で出会った頃のことを思い出すという歌。60~70年代に若者だった世代の夫婦を描いているようでもあり、同時にトワエモワの姿が重ねられているようにも感じられる。

 「僕が詞を書くときの“私”は、いつも白鳥英美子さんです。年齢を重ねてショーウィンドウに映る二人は、当然トワエモワを意識していますね。僕たちの青春時代には、街に歌があふれていました。サイモン&ガーファンクルビートルズフォーク・ソング……。詞に出てくるキャロル・キングの歌は、僕の中では《It's Too Late》のイメージです」(芥川澄夫

 実際に存在する“ケヤキ通り”をモデルにしているのだろうか?

 「私は阿佐ヶ谷(東京)で育ち、あの街のケヤキ通りが開通した頃からずっと見てきました。ですので今回は芥川さんの詞を見ながら、大好きな阿佐ヶ谷のケヤキ通りを歩く姿を想像して曲をつけました」(白鳥)

 心浮き立つようなリズムとメロディ、そこに言葉ひとつひとつが持つリズムや語感がぴったりと見事に当てはまっている。

 「トワエモワの作品は、すべて詞が先に出来上がります。そこに白鳥さんが曲をつけてから、二人の長い戦いがはじまるのです(笑)。大切にしているのは、妥協しないこと。何回でも相談しながら完成させていきます」(芥川)

 1969年にデビュー、わずか4年で解散し、97年の再結成後はマイペースに活動を続けてきたトワエモワ。45年前と今とでは、なにが変わって、なにが変わらないと感じているのだろうか。

 「デビューしてすぐに《或る日突然》がヒットして、毎日がまるで急ぎ足のようでした。4年で解散したのも、自分を見つめ直し、歌を大切にしたかったからだと思います。再活動をはじめてからは、とても丁寧に歌と向き合っています。そして45年もの長い間、大好きな歌を歌うことができた喜びを感じています」(白鳥)

 「当時と変わったことは、音楽が街や商店街から流れてこなくなったことです。今は、イヤフォンの中でしか音楽が聞こえなくなりました。けれど、歌の持つ力は今も昔も変わることがありません。震災などが起こるたび、なおさらそのことを再認識します」(芥川)