(左から)延本文音、倉品翔、吉田卓史、つのけん(いずれもGOOD BYE APRIL)、小渕晃

〈ネオニューミュージック〉を掲げ、山下達郎や財津和夫などの先人から影響を受けた良質な楽曲を生み出し続けるバンド、GOOD BYE APRIL。彼らが4作目のフルアルバム『swing in the dark』を1月19日にリリースした。どこか懐かしくみずみずしい歌の魅力はそのままに、アレンジの幅が大きく広がり、音像は従来よりグッとモダンになった。

そんな今作のリリースを記念して、この度Mikikiでは座談会を実施した。パネラーの一人として進行役を務めたのは、元「bmr」編集長にして「シティ・ソウル ディスクガイド」の監修者である小渕晃。〈シティポップと楽しむ〉をキーワードに常日頃からジャンル横断的な音楽の聴き方を提案している小渕は、GOOD BYE APRILというバンドに一体どんなものを見て取ったのだろうか。世代や立場を異にする両者がクロスオーバーした、貴重な対話の模様をどうぞ。

GOOD BYE APRIL 『swing in the dark』 DOBEATU(2022)

 

GOOD BYE APRILの原風景をなす音楽たち

小渕晃「みなさんは、これまでどんな音楽に触れてこられたんでしょうか?」

倉品翔(ボーカル/ギター/キーボード)「僕の家では、小さい頃からチューリップや山下達郎さんがよく流れていたんです。その後、学生時代は主にJ-Popを聴いて育ってきました。なので自分のルーツはニューミュージック以降の日本のポップスなんじゃないかと思います。

とは言え洋楽も聴いていて、ビリー・ジョエルはずっと好きでしたし、大学時代にはUKロック、特にオアシスをめちゃくちゃ聴いていました」

延本文音(ベース)「私は家にCDのほとんどない家庭で育ったんですが、車で遠出するときだけBGMとしてユーミン(荒井由実/松任谷由実)のベスト盤などがかかっていました。

私はもともと画家になりたいと思っていたんですけど、中学生のあるとき、そういう一人で何かを作り続けるような仕事は自分にはできないなと感じてしまって。その後バンドというものがあるのを知り、いろんな人とチームで何かを作るっていうことに憧れるようになったんです。高校生になると、楽器を持つのも初めてという状態でバンドを組んで徐々に音楽の面白さを知り、だんだん良質な音楽だけでなく、プログレッシブな音楽も好きになって、いまに至るという感じです」

吉田卓史(ギター)「僕の家にはレコードがいっぱいあったんですけど、何があったかはほとんど覚えていなくて、アルバムとして唯一鮮明に記憶に残っているのがイーグルスの『Hotel California』(76年)なんです。他にはボズ・スキャッグスとかビリー・ジョエル、あとはやはりユーミンもよく流れていました。

その後ギターを始めてからはますます洋楽にのめり込んでいって、J-Popはあまり聴かなかったです。基本的にはロックが好きでしたが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズみたいなミクスチャーロックを介してファンク系の音楽なんかも聴いていました」

つのけん(ドラムス)「うちは親父が昔からキーボードをやっていて、スティーヴィー・ワンダーとかビリー・ジョエルがすごく好きだったんですよ。あとはアース・ウィンド&ファイアーのようなダンスミュージックや山下達郎さん、それにうちの母親が好きだったドリカムなども家や車でよく流れていました。そういう音楽がいまの活動に繋がってるんだなと最近実感しています。

あとは洋楽ロックも好きで、特にミスターBIGのパット・トーピーのシンプルで力強いプレイにはドラマーとして影響を受けています」

 

自分たちらしさを壊していって最後に残るのは〈郷愁〉かも

小渕「みなさんのお話を伺っていて、倉品さん、吉田さん、つのけんさんの3人がもともと音楽好きだった延長線上でGOOD BYE APRILとしての活動に至った一方で、延本さんだけアートから入ってこられたというように、ルーツが違うのが面白いなと感じました。延本さんの存在がいいアクセントになっているんでしょうね」

延本「たしかに突拍子もないことを言い出すのは私かもしれないです(笑)」

倉品「結成当初から、王道から少し外れたアイデアを常に持ってくる人だったんですよね。それに刺激を受けて曲がブラッシュアップされていくという側面は、いまに至るまでずっとあると思います」

小渕「延本さんは〈このバンドならではの味がないと意味がない〉っていうような考え方を意識的にされていますか?」

延本「私は〈自分らしさ〉みたいなものが固まってしまうのが嫌いで、ちょっとでも固まりそうになると一度全部壊したくなるタイプなんです(笑)。あとはとにかく〈同じことを繰り返したくない〉っていう気持ちがあるんで、できるだけ何も決めずにやりたいんですよね。なので〈自分らしさを出したい〉というよりはむしろ〈そこから脱却したい〉と、いつも考えているかもしれないです。

でも同時に〈一度徹底的に壊してみてなお残るものがあれば、それは大事にしたい〉という気持ちも持っています。GOOD BYE APRILの場合、最後に残るのは〈郷愁〉なのかなと思っています」

小渕「では一方でソングライティングについてはいかがでしょう? 倉品さんは、何か一貫したテーマみたいなものを自分に課しているんでしょうか」

倉品「僕は逆に〈自分にしか書けない曲って何だろう〉っていうことを昔からずっと考え続けていますね。なのでバンド内で〈自分らしさ〉みたいなものに特に囚われがちなのは、僕だと思います。それをメンバーに壊してもらってきた結果、いまがあるという感じがしています。

〈自分にしか書けない曲〉が具体的にどういうものかを言語化するのは難しいんですけど、一つテーマとしてあるのは〈いまここにないものを想う気持ちを表現する〉ということですかね。〈いいメロディー〉の条件として、そういう感情と結びついていることがすごく大事だと思っていて、どんなに明るい曲であっても、メロディーに切なさがあるっていうのが、ポップスのスタンダードとして残るものの本質なんじゃないかと考えています」

 

ジャンルはクロスオーバーしているのが当たり前

小渕「チューリップの曲とかも、まさしくそうですもんね。他に誰か、GOOD BYE APRILで制作するにあたって参考にしているようなアーティストはいますか?」

倉品「たくさんいるんですけど、クリストファー・クロスとかはすごく好きです。僕はそもそもジャズとかソウルみたいな音楽をそんなに通ってきているわけではないんですけど、近年自分たちの音楽性が変化するにつれてAORやシティポップを聴くようになって、だんだんブラックミュージック的なものも好きになりましたね。中でも角松敏生さんが好きで、そこからブラックコンテンポラリーに興味を持ちました」

延本「私の場合、直接〈ジャズが好き〉とか〈ソウルが好き〉っていう風に聴いたことがないわりにそのノリをある程度理解できているというのは、やっぱり山下達郎さんとかを聴く中で間接的にそういう音楽のエッセンスを受け取っていたからなんだろうな、と感じます」

小渕「まさにそうでしょうね。みなさんの世代においては、もう最初からジャンルが完全にクロスオーバーしているんじゃないかという気がします。加えてみなさんはプレイヤーでいらっしゃるから、なおさらジャンル分けとかをせずに自然といろんな音楽を吸収されているんだろうなって思います。僕はいま50代なんですけど、僕らの世代ではもっとジャンルをかっちり分けて音楽を捉えていたので、そこは全然違うんだろうなと」

延本「そうですね。私の場合、たとえばある作品がジャズとして紹介されていたとしたら、〈ジャズだけなんだ!〉と逆に珍しく感じてしまうかもしれないです。それだけ、もう自分の中でジャンルがぐちゃぐちゃになっているんだと思います」

小渕「僕らの世代でバンドをやっていた人だと、たとえばドラマーなら〈16ビートはわからない、8ビートしか叩けない〉というような方も結構いらっしゃったんですけど、みなさんはいちいちそういう違いを考えないでしょう?」

つのけん「たしかに自分がプレイするときにも、実際には8ビートだったとしても感覚的には16ビートみたいな意識で叩いていたりとか、あるいはちょっとスウィングしていたりとか、そういう感じで混ざり合っている部分はありますね」

小渕「たぶんそういうのって、チューリップとかオフコースの時代とは決定的に違うところだと思うんですよね」

倉品「最近では、8ビートの曲を本当に8ビートの感覚だけでプレイするような人がむしろあまりいないかもしれないですね。それに関連して言うと、ジャズルーツとかR&Bルーツの人がポップスの中で8ビートの曲を演奏しているというケースもかなり増えている感じがします」