METRONOMY
人生を変えた夏。あの胸の高鳴り、甘酸っぱさ、そして心地良い倦怠感がいまも鮮明に甦る

 UKのエレクトロ・ポップ・ユニット、メトロノミーから夏の便りが届いた。5枚目のニュー・アルバム『Summer 08』は、表題通り〈2008年の夏〉をテーマに、ちょっぴり懐かしくてヒネリのあるメロディー&ビートで彩られた内容だ。しかし、それだけで本作を〈ノスタルジック〉と言い切るのはやや乱暴かもしれない。

METRONOMY Summer 08 Because/ワーナー(2016)

「僕にとってノスタルジックな気持ちは、ネガティヴなイメージだな。このアルバムはメタ・ノスタルジーに少し影響されていて、過去にすがっているわけではないんだ。僕はいま33歳なんだけど、25歳に生まれ変わったかのような気持ちで曲を作成したよ」(ジョセフ・マウント、ヴォーカル/キーボード/ギター:以下同)。

 いまから8年前と言えば、バンドが2作目『Nights Out』で世界デビューを飾った年。ちょうどクラクソンズレイト・オブ・ザ・ピアーを筆頭に、〈ニューレイヴ〉なるムーヴメントが盛り上がっていた頃だ。同じタイミングにブレイクしたグループのほとんどが解散/活動休止してしまった状況を顧みると、メトロノミーがいまなおメジャーのフィールドで勝負しているのは本当に凄いことだと思う。歩みを止めないその姿勢は、ジョセフのこんな発言からも窺えようか。

「ひとつのレコードが完成した瞬間に、次のレコードを作りたいと思いはじめるんだよね。2014年の前作『Love Letters』は苦戦したから、音にその思いが表れていると思う。でも、今回は正反対の感情を抱きながら作ったんだよ。この作品はスムースに出来たし、だからこそ和やかな音に仕上がったのかもしれないな」。

 これまでと同様にセルフ・プロデュースで作られた本作には、初の試みとして2人のゲストを招待。ファットなビートが脈打つ“Old Skool”ではビースティ・ボーイズのDJ、ミックス・マスター・マイクがキレッキレのスクラッチを披露し、“Hang Me Out To Dry”ではロビンがリズミカルな歌を添えている。また、これも初の試みとなるオスカー・キャッシュ(サックス/ギター/キーボード)がマイクを取った“Summer Jam”は、ややレイドバックしたシンセ・ファンクに仕上がっていて、パーティーの後の脱力感を描いたような『Nights Out』の終盤部分と地続きになる、まさに本作のキモと言える一曲だ。

「全編を通じて〈音楽を作る幸せ〉を描いているんだ。それに加え、このアルバムは将来の作品に関するさまざまなアイデアを提供してくれたよ。このアイデアがどのような形に成長するか楽しみだね」。