クライバーの再来のような颯爽たるベートーヴェンである。第1楽章より音色は澄み切って輝かしく、リズムは軽やかでアクセントは痛快。モダン楽器演奏ながら響きの見通しは良く、総奏の中から木管が自在に浮沈する。第2楽章では低弦が意味深く音色に翳りを与えつつ、管楽器群は華やかな彩りを加え、第3楽章はリズムが立ち、ざわめき、目まぐるしい楽器交代は名人芸的。終楽章のフーガでの立体的な眺望も素晴らしく、まるで巨大な構築物の中にいて輝かしい光が差し込む天井を仰ぎ見るかのよう。作曲者の冴えた筆の走りが、ユロフスキの才気と相まって圧倒的な音楽美を次々と生み出すさまはまさに壮観だ。