謎の電波塔から発信された架空のラジオ番組――そんなイメージも膨らむ2年ぶりのニュー・アルバム。cero以降の現代的エキゾ解釈の最新型を展開してみせた前作『世界各国の夜』は各所で大きな話題を集めたが、本作ではよりディープに自身の音楽世界を構築。エキゾチカ~ムード音楽~各種ラテン・ミュージック~レゲエ/ダブなど構成要素こそ前作を継承しているものの、全体を覆う幽玄な雰囲気は前回になかったもの。ジャケットを手掛けた坂本慎太郎の諸作とも通じる、VIDEOTAPEMUSIC流の涅槃音楽集とでも言えるだろうか。そこに華を添えるのは、思い出野郎Aチームのメンバーや荒内佑(cero)、鶴岡龍ら盟友たち。ムーンバートン的なムードも漂わせるNOPPALをフィーチャーしたナンバー“Her Favorite Moments”では新境地も開拓しているほか、フィールド・レコーディング音源も導入。彼のディスコグラフィーのなかでも重要な位置を占めることになるだろう意欲作だ。