Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第73回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【鈴木英之介】

No Lie-Sense “ah-老衰mambo”

鈴木慶一+KERAによるユニットの新曲。〈老衰〉という決して軽くないテーマを扱いながらあくまでユーモラスに仕上げるところが、いかにも鈴木慶一らしい。そして全編を彩る脱力したようなホーンのフレーズが、その詞世界にぴったりハマっている。その緊密な結合ぶりから、ポップ・ミュージックというものは詞、メロディー、アレンジの三位一体で考えなくてはならないものなのだと再認識させられる。だがもう一つ、〈音響〉という要素を忘れてはならない。極めてデッドに録られたリズム隊の音が、曲の乾いたユーモアを浮き彫りにしていてまた素晴らしいのだ。

 

VIDEOTAPEMUSIC “Spring Fever”

空気をたっぷりと含んだような浮遊感あふれるプロダクションが、ひたすら耳に心地よい。鳥の鳴き声などの自然音のサンプリングも、そうしたチルな雰囲気を醸成するのに一役買っていそう。タイトルには〈Spring=春〉とあるが、常夏の南国を彷彿させるトロピカルなムードも感じられる。

 

Jumpei Kamiya with... “Invisible Seasons”

5月に先行ダウンロード配信された神谷洵平初のソロ音源。そのMVが先日公開された。メロウなフォーク・ロックを基調としながら柔らかなホーンやペダル・スティール・ギターなどを絡ませ、空間的な広がりを生み出すアレンジはアンディ・シャウフなどを彷彿させる。そして、コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛により、実感しにくくなってしまった季節の移り変わりを平易な言葉で繊細に捉えた詞が、その音世界によくマッチしている。

7月29日に配信開始したShine Again(feat.THE CHARM PARK)も、合わせて要チェックだ。

 

【小峯崇嗣】

CUB “Her”

茨城県で結成されたエレクトロ・ポップ・ユニット、CUBが先週新曲“Her”をリリースしました。ミニマルなビートと共に、妖艶で甘美な歌声とドリーミーでトロピカルなエレクトロ・ポップ・サウンドが鳴り響く一曲。

彼らにはTOWER DOORSからメール・インタビュー〈6つの質問〉に答えてもらっています。気になった方はぜひ併せてチェックしてみてください。

 

yuka_miii “Here and Now”

都内を中心に活動するSSW、yuka_miiiのデビュー・シングル”Here and Now”をご紹介します。Kan SanoやTENDREを想起させるような、ヒップなビートとジャジーでメロウなサウンドが絡み合ったビター・スウィートな一曲。そして彼女の霞みがかった淡くも流麗な歌声との相性が抜群に最高です。今後確実に芽を出していくこと間違いなしです。

 

NORTH “EYES ON ME”

TOWER DOORSで何度かご紹介したことがあるSSW、NORTHが新曲“EYES ON ME”をリリースしました。The 1975を想起させる煌びやかなポップ・サウンドと、心地良いリズムとリリックが折り重なる一曲です。

 

New Biboujin “Skin (feat. Ai Kakihira)”

遠隔地で楽曲制作を行う3人組のNew Biboujinが、長崎のSSW、Ai Kakihiraをフィーチャリングさせた新しい試みを行った新曲”Skin”をリリース。人工物と自然物が同居するような、怪しげに漂うチルウェイヴ的シンセ・サウンドとミドル・テンポのダンス調のリズムが混ざり合うサイケ・ポップな一曲です。

 

【田中亮太】

c l y n “I don’t know you”

ラブサマちゃんの新曲を採り上げようと思ったら、2人先客がいました。代わりと言うわけではまったくないですが、自分はこれを。東京を拠点に活動するインディー・ロック・バンド、c l y n(クライン)のファースト・シングル。フワフワとした感覚と胸痛むメランコリアが同居するシューゲイザー。気怠いまま飛んでいく。

 

藤原さくら “MONSTER”

藤原さくらさん新曲は、なんと冨田恵一(冨田ラボ)プロデュース。ゴージャスなホーンとスウィンギンなリズムが彩るガールズ・ポップで最高です。考えてみれば、彼女はモッドな魅力がありますね。

 

Yung Kiss “JUICE”

UsのKen truthsとS亜TOHのLingnaによるZ世代のJ-Popユニット。もっとポップに暴れまわってほしいというのが本音ではありますが、この曲はまだ軽いジャブといったところでしょう。Us周辺のバンドがこぞって参加した新世代コンピ『Destruct Tapes #1』も要チェック。