大舞台を経て完成させたのは、これまで以上にさまざまな装いの楽曲が並ぶSHOWCASE。表情豊かなヴォーカルで次々に魅せる彼女の最新モードはどうですか?

 「ラブライブ!」シリーズから派生したユニット、μ'sのメンバーとして大きな注目を集めた後、ソロ・アーティストとして精力的な活動を続けているPile。ライヴ・パフォーマーとしての力量も確実に向上している彼女は、昨年12月に初の日本武道館公演を成功させた。

 「武道館はグループのときに出演したフェスで4曲くらい歌ったことがあるんですけど、まさかソロとしてライヴをやれるとは思ってなかったから、ホントに嬉しかったですね。4時間弱のステージだったんですが、最後までずっと元気だったし、ライヴの映像作品『Pile Live at Budokan』を観ていても〈楽しそうだな、私〉って思いました(笑)。今年でソロ10周年なんですけど、いいタイミングで大きいライヴができたのも良かったですね」。

 

Pile SHOWCASE Colourful(2018)

 そんな10周年イヤーのキックオフを告げるのは、4枚目のフル・アルバム『SHOWCASE』。ゲーム・アプリ〈ザ・マジックナイトメア〉やアニメ「王様ゲーム The Animation」の主題歌となったシングル“絆 Hero”“Lost Paradise”を含む本作は、タイトルが示す通り、幅広い音楽性が楽しめる作品に仕上がっている。

 「アルバムのジャケットも、私がショウケースのなかに入ってますからね(笑)。ライヴで盛り上がれる曲が好きなので、いままではロック・テイストの曲が多かったんですけど、今回はいろんなタイプの曲を収録したかったんです。儚い雰囲気のバラードや切ないラヴソングもあって、本当に〈SHOWCASE〉みたいに楽曲をファンに紹介しているアルバムだって。もともと私はいろんな音楽を聴いていて、ロックやポップス、レゲエ、あとアニソンもそうだし、邦楽/洋楽を問わずに好きなんですよ。前回のアルバム(2017年作『Tailwind(s)』)は応援してくれるファンの人たちに向けた作品だったんですが、今回は〈こういうPileはどうですか?〉と提示している感じかもしれないですね」。

 ハード・ロッキンなサウンドを採り入れた攻撃的なアッパー・チューン“脳内ドリーマー”、アジアン・テイストの旋律が郷愁を誘う“moon”、〈2度目に会ったときに恋が始まる〉というシチュエーションを描いたラヴソング“Second Impression”。さらには繊細なメロディーと共に〈いつか解り合える〉という切実なメッセージを伝える“Signal”など、本作にはヴァラエティーに富んだ楽曲が揃っている。その中心にあるのは、曲ごとの色によって表情を変える彼女のヴォーカルだ。

 「いま2度目のアジア・ツアーをやっているんですけど、現地の皆さんが親しみを持てる曲が欲しいと思って作ったのが“moon”なんです。情景がすごく思い浮かんでくる曲なので、歌っていても楽しかったですね。“Signal”みたいなバラードも好きです。今回は女性の作詞家の方(畑亜貴、結城アイラ、yuiko)にもたくさん参加してもらってるので、優しい感じの曲も多いですね。レコーディングを通していろいろな歌い方を試したし、曲によって声色や表現も違うと思うから、〈こんな歌い方もあるんだ?〉って感じてもらえるんじゃないかな」。

 アルバムの最後を飾る“Go My Way”におけるエモーショナルな歌声も心に残る。疾走感に溢れるバンド・サウンドのなかで〈この人生を謳歌して進もう〉という決意を歌い上げるこの曲は、現在のPileの心境とも強く重なっているようだ。

 「今回のアルバムは架空の主人公の物語を切り取った曲が多いんですけど、“Go My Way”は唯一、私自身のことを歌ってますね。これまでの私の経歴というか(笑)、グループでの活動があって、改めて“伝説のFLARE”でソロ・デビューして、武道館でライヴもできて。〈これから、まだまだがんばっていくよ!〉という気持ちが出ている曲だと思います」。

 楽曲の幅を意欲的に広げることで、シンガーとしての新たな表現を手に入れたPile。「いままではCDになった自分の声が好きじゃなかったんですけど(笑)、今回は〈いい感じで歌えてる!〉って素直に思えて。自分でも何度も聴いてます」と語るように、自身も大きな手応えを感じているようだ。5月上旬には東名阪でライヴ・イヴェント〈Pile Birthday Party!!!〉も開催。10回目のアニヴァーサリーとなる今年は、彼女にとってさらなる飛躍の年になるだろう。

 「まずは『SHOWCASE』の楽曲をライヴで歌っていきたいです。それぞれの曲をもっと歌い込んでもっと自分のものにできれば、Pileとしての表現も広がるんじゃないかな。もともと〈アーティストはいいライヴをやれないとダメ〉という気持ちが強いんですよ。その場でしか聴けない歌を歌いたいし、お客さんに〈得した!〉と思ってほしいので。ステージを重ねるなかで、アルバムの曲をどんどん進化させていきたいですね」。