〈次世代ヒップホップ・クルー〉という枕詞がもはや必要ないほど、シーンを代表する存在となったYENTOWN。その最年少ラッパーであるkZmが、ファースト・アルバム『DIMENSION』をついにリリースする。昨年は同クルーのMONYPETZJNKMNやAwichのアルバムへの参加、さらにMIYACHI、AKLOとの“KILL IT EYDEY”、5lack & RUDEBWOY FACEと客演したKOJOEの“BoSS RuN DeM -Remix-”などでリスナーの耳をさらったkZmだが、ソロとして、ここまで〈満を持して〉という言葉が似合う男もそうそういないだろう。

kZm DIMENSION YENTOWN/bpm tokyo(2018)

 「自分ひとりの曲を作ってないなと思いつつも、これだけ待たせたならちゃんとしたものをリスナーに届けたかったし、ソロで出すなら、中途半端にEPとか自主でSoundCloudにアップするとかはしたくなかったんです」。

 アルバム・タイトルの『DIMENSION』には、ふたつの意味が込められているという。

 「ヒップホップっぽいことをしたくないわけではないけど、そういうのに縛られずに〈次元〉の違うものを作りたかったのがひとつ。あともうひとつは、たまに滝とか洞窟に行って瞑想する時に〈Dimensions〉っていうアプリを使っていて。アルバムのイントロはその音なんですが、それがすごいエモくて良いんですよ」。

 サウンドを全面的に支えるのはもちろんChaki Zulu。さらにFla$hBackSのjjjは和のテイストに激しいビートを重ねた“KOKORO”をプロデュースし、海外からはチームSESHのhnrkや元オッド・フューチャーのブランダン・デシャイらがkZmの新たな一面を引き出している。

 「“WANGAN”は、ゲーセンの〈湾岸〉で遊んでるのをRIKIYAっていう俺のバックDJがSnapchatにアップしたら、ブランダン・デシャイから〈俺も湾岸好きなんだよね!〉って連絡が来たことで生まれた曲。hnrkは知り合いから繋いでもらったんですけど、チームSESHもマジで好きなのでうれしかったですね。日本ではまだそれほど知られてないかもしれないですけど、彼らは俺にとってのスターなので」。

 フィーチャリングには、すでに公開されているリーボックとのコラボMV“Sect YEN”が話題沸騰中のAwichをはじめ、MONYPETZJNKMNのPETZとカリフォルニアのマルチ・アーティストであるGab3のコンビ、さらにkZmと同い年の盟友BIMなどが名を連ねる。そしてkZmがもっとも尊敬していると語る5lackとの“Wolves”は、格好だけのラッパーに〈忠告〉するかのような圧巻のマイクリレーに鳥肌が立つ、本作のハイライトのひとつだ。

 「俺の中で5lackさんは、もはやラッパーではなく音楽家。リリックも、フロウも、立ち振る舞いもすべてヤバい。5lackさんとやるうえで、たぶんリスナーの多くは5lackさんのノリに俺が乗っかると思っている気がするので、逆にこっちの世界に引き込めれば、俺のアルバムでしか聴けない曲になると思って作りました」。

 アルバムを通して、kZmの紡ぐリリックはストリートのトピックに留まらない。愛、宇宙、未来……それらに向き合う己の中に世界を作り出し、〈消費されない〉言葉たちを吐く。

 「トラップで直接的な表現のリリックが流行った後、自分も含めみんな考える時期なのかなと。〈どういう意味で言ってるんだろう〉とか〈それを言うってことはどういう人間なんだろう〉って、勝手に想像できるのも音楽の魅力のひとつ。『DIMENSION』はそういう聴き方をできるアルバムになっていると思います」。    

 


kZm
94年生まれ、東京は渋谷出身のラッパー。幼少期から父親の影響でファンクやソウルを聴いて育つ。2015年にdiZZyら友人たちとkiLLaを結成し、“BMW”や“Ice Cold City”を発表。並行してYENTOWNに加入し、『CONCRETE GREEN 13』にてSEEDAらとの“BUSSIN”で脚光を浴びる。2016年にはバウアーやBCDMGらの楽曲参加を経て、kiLLa脱退を表明。2017年はAwichの“Crime”、MONYPETZJNKMNの“SIVA”、KOJOE“BoSS RuNDeM Remix”などの人気曲に参加し、MIYACHI、AKLOとコラボした“KILL IT EYDEY”でも話題を呼んだ。このたびファースト・アルバム『DIMENSION』(YENTOWN/bpm tokyo)を3月28日にリリースする。