コラム

Creepy Nuts“Bling-Bang-Bang-Born”の世界的ヒットは必然だった? 楽曲を紐解いてわかった、DJ松永とR-指定による音楽的な企み

2024年1月7日に配信リリースされたCreepy Nuts“Bling-Bang-Bang-Born”の快進撃が止まらない。アニメ「マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編」のオープニング主題歌として書き下ろされた同楽曲は、1月15日付のSpotifyグローバルチャートTop 100にて80位にランクインすると、台湾、インドネシア、メキシコ、ウクライナなど世界各国のiTunesヒップホップチャートで1位を獲得、さらにBillboard JAPANによる世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した〈Global Japan Songs Excl. Japan〉でも首位に輝き(1月25日付)、その勢いは加速する一方だ。

そんな“Bling-Bang-Bang-Born”の世界的ヒットの要因を、ライターの北野創に紐解いてもらった。以下のテキストを読んでもらえば、このヒットが決して偶然ではなく、DJ松永とR-指定が明確に狙ったものであることを理解してもらえるはずだ。 *Mikiki編集部

Creepy Nuts 『二度寝/Bling-Bang-Bang-Born』 ソニー(2024)

 

“Bling-Bang-Bang-Born”​に備わる強度とオリジナリティ

R-指定とDJ松永によるヒップホップユニット、Creepy Nutsの“Bling-Bang-Bang-Born”が、日本だけでなく世界的なバイラルヒットを巻き起こしている。その要因になっているのが、アニメ作品とのタイアップ効果だ。

今年1月より放送がスタートしたTVアニメ「マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編」のオープニング主題歌となる本楽曲。そのオープニングアニメ内で主人公のマッシュ(・バーンデッド)が踊る動きをマネた、通称〈BBBBダンス〉にチャレンジする動画がTikTokを中心に世界中でブームとなり、それらの流行に紐づく形で、世界各地の配信チャートやストリーミングランキングを席巻しているのだ。

とはいえ、アニメの力だけでは、ここまで大きなムーブメントにはそうそうなり得ない。年間300本前後のアニメ作品が制作・放送されている現在、それに比例してアニメソングも年間数百曲単位で生まれているわけだが、そのなかで世間的な話題・評価を集める楽曲はほんの一握り。世界規模の話題作となると、さらに絞られることになる。

2023年最大のアニソンヒットとなったYOASOBIの“アイドル”(TVアニメ「【推しの子】」オープニング主題歌)にせよ、アメリカレコード協会(RIAA)によりゴールド認定を受けた米津玄師の“KICK BACK”(TVアニメ「チェンソーマン」オープニング主題歌)にせよ、アニメ作品のヒットによる効果だけでなく、楽曲そのものに優れた魅力やインパクトが備わっていたからこそ、結果を残すことができたのだ。その意味では、Creepy Nutsの“Bling-Bang-Bang-Born”もまた、楽曲自体の強度とオリジナリティによって、世界のリスナーをも虜にしたのは間違いない。

 

Creepy Nutsも採り入れた近年のジャージークラブの隆盛

まず前提として、“Bling-Bang-Bang-Born”はグローバルな音楽的トレンドを踏まえた楽曲になっている。その最たるものが、ジャージークラブの要素を採り入れたサウンドメイクだ。

ジャージークラブは、アメリカのニュージャージー州で生まれたベースミュージックのサブジャンルの1つで、詳細は長くなるので省くが、1小節にキックが5回打たれるリズムワーク(文字にすると〈ドッ、ドッ、ドッドッドッ〉といった感じ)や、ベッドのバネが軋むキコキコした音(ベッドスクイークと呼ばれる)が主な特徴。2010年代にカシミア・キャットやリドといったEDM系のDJ/プロデューサーが自身の楽曲に導入することで広く知れ渡るようになり(リドはトリッピー・タートル名義で有名曲のジャージークラブリミックスをSoundCloudなどに公開していた)、日本でもクラブやネット周辺のDJ/クリエイターを中心に人気を集め、フューチャーベースとともに定着。アニソン/キャラクターソングなどにもその要素が引用されていく。

SoundCloudなどの音楽プラットフォームやSNSの影響によって、世界中にその作法が広がっていくなか、アメリカのメジャーシーンでも、シアラ“Level Up”(2018年)などのジャージークラブを採り入れた楽曲が登場。さらにヒップホップのサブジャンルであるドリルミュージックと融合したジャージードリルが誕生し、ヒップホップ界隈にもそのサウンドが浸透していく。

そして2022年、ドレイクがハウスミュージックに接近した7作目のアルバム『Honestly, Nevermind』にて、ジャージークラブ直系の“Sticky”やベッドスクイークが忙しく鳴る“Currents”を発表。さらにリル・ウージー・ヴァートによるジャージードリル調の“Just Wanna Rock”(2022年)がヒットを記録し、ジャージークラブは完全にトレンドのサウンドとなったのだ。

2023年は、ラテントラップの雄ことバッド・バニーが“Where She Goes”をチャートに送り込み、NYドリルのシーンから登場したアイス・スパイスと説明不要のニッキー・ミナージュによるコラボ曲“Barbie World (with Aqua)”といったデカめのジャージードリル曲も登場。日本のラップ/ヒップホップシーンでも、2022年頃からジャージー寄りのアプローチの楽曲が多く見られるようになる。なかでもLANA“PULL UP”(2022年)、SKY-HIと☆Taku Takahashi(m-flo)のタッグによる“D.U.N.K.”(2023年)、JUMADIBAの〈ワンツーツィで餃子食べて 立ち止まって考える〉というフレーズがTikTokでバズったkZm“DOSHABURI feat. JUMADIBA”(2023年)辺りは広範囲に届いた楽曲ではないだろうか。