AWICH 『孔雀』 トレンドにも目配せしつつ、自身の色彩感覚をより深く追求した表現も出し、これは2020年のベスト・アルバムになるかも

2020.01.10

Do You Remember ?
変幻自在の歌唱表現と色鮮やかな意匠を纏って唯一無二のカリスマが再臨——さらなる独創性を野心的に磨き上げたAWICHが待望のニュー・アルバム『孔雀』をリリース!

 YENTOWNに加入してChaki Zuluのトータル・プロデュースによる2017年のアルバム『8』で俄にシーン最注目の存在へと急浮上したAwich。その年を代表する一枚となった同作のリリース以降は、KOJOEの“BoSS RuN DeM”やMIGHTY CROWNの“Foo Fool Boy”、SOIL & ""PIMP"" SESSIONSの“Heaven on Earth”と多岐に渡る客演も行い、IOとのコラボ・チューン“What You Want”を経た2018年秋にはそれぞれ4曲入りの連作EP『Heart』『Beat』を配信……そこから次なるアルバムへの期待も膨らんではいたものの、リリースという面ではしばしのブランクが生じることになっていた。ただ、それでも2019年にはANARCHYとの圧巻のコラボ“Loca”やPETZの“Made Myself”で気を吐き、唾奇とのカップリング・ツアー敢行や、Red Bullが公開したアジアのアーティストにフォーカスした88risingの長編ドキュメンタリー「Asia Rising: The Next Generation Of Hip Hop」でも大きくフィーチャーされるなど、その衰えるない存在感は日本のみに止まることなく大きく育ってきたように思える。

 そして新年早々に姿を現すのが約2年ぶりとなるフル・アルバム『孔雀』だ。表題の意味するところは、〈美しくも飛べない鳥〉でありながら〈毒虫や毒蛇を好んで食べる益鳥〉として尊ばれてきた孔雀の、邪気を払う象徴という気高いイメージが重ねられているという。もちろん今回もトータル・プロデュースを担うのはChaki Zulu。2019年だけでもYo-SeaやTaeyoung Boy、Leon Fanourakis、SALUらの作品で手腕を発揮してきた彼が大半の楽曲を手掛け、他には前作でも絡んだKe Yano$、さらにJIGGやマット・キャブ、YENTOWN初期から縁深いバウアーといった面々もプロデュースに参画して主役の独創性をさらに守り立てている。

 オープニングを飾るのは『Heart』の人気曲だった“Love Me Up”で、そこから妖しい音色のループとナレーションのような語り口でDOGMAと鎮座DOPENESSを呼び込むドープな“洗脳”、さらに不穏なヘヴィー・トラップ“NWO”へと流れ込んでいく序盤だけで、前作とはまた異質の緊迫感を纏った不思議な音世界に呑み込まれるはずだ。『Beat』初出でkZmを迎えた“NEBUTA”のアルバム・ヴァージョン、バウアー制作の“Open It Up”を経て注入される“Poison”はゆるふわギャングのNENEをフィーチャーしたパワフルなリード曲。続くJP THE WAVYを招いたソリッドな“Bloodshot”も含め、ゲスト・アクトとの刺激的なコラボによってAwich自身のフレキシブルな魅力が表出される相乗効果も前作以上だろう。

 EGO-WRAPPIN'“色彩のブルース”をサンプリングして話題になった『Beat』収録の“紙飛行機”とマット・キャブ製のインティメイトな“4:44”を折り返しにしての後半は、ズバ抜けてメロディアスなダンスホール調のクラップ・チューン“Lose Control”、祈りに満ちたコーラスを配してソウルフルな熱唱を聴かせる“First Light”と内省的な表情も見せつつ、前作の人気曲“WHORU?”に通じる鼻っ柱の強さで畳み掛ける“Gangsta”、トロピカル風味のビートで開放感を描く“Pressure”、同じ沖縄出身のOZworldと故郷に思いを捧げるドラマティックな“DEIGO”……と曲調の振り幅もあってラストまで集中力は途絶えず。ディープなハウス仕立ての“Arigato”でのエンディングも不思議な余韻を残していくはずだ。全体的に世間的なトレンドにも目配せはしつつ、自分自身の色彩感覚をより深く追求したような表現が前に出てきているのも相変わらず頼もしくて、年明けからいきなり尊い何かに触れたような気分になる。そんなわけで……これは2020年のベスト・アルバムになるかもね!

TOWER DOORS
pagetop