進化し続ける究極の生命体……成功を収めてなお新たな境地を目指し、地平線を追いかけ続ける狼たちは止まらない。

2010年に突如音楽シーンに登場した、究極の生命体5匹からなるバンド、MAN WITH A MISSION。2016年にリリースされた前作『The World's On Fire』は25万枚を超える大ヒットを記録。日本武道館、横浜アリーナ、幕張メッセ、さいたまスーパーアリーナでのそれぞれのワンマン公演は即日ソールドアウト。ガンズ・アンド・ローゼズなど海外の大物バンドのサポートアクトを務めるのみならず、ジミー・イート・ワールドやストーンサワーといったUSのバンドと北米ツアーを敢行し、ヨーロッパやアジアでもツアーを行うなど、ワールドワイドに活動を拡げている。そんな彼らが、通算5作目となるオリジナル・アルバム『Chasing the Horizon』をリリースする。

MAN WITH A MISSION CHASING THE HORIZON Sony Records(2018)

今作には全14曲が収められており、これまでリリースされたシングル曲やタイアップ曲を多数収録した強力な内容だ。近未来を思わせるサイバーなサウンドをバックにジャン・ケン・ジョニーの切れ味鋭いラップが炸裂する“2045”で幕を開け、マシーナリーなビートと不穏なサウンドを伴いパンキッシュに疾走する“Broken People”に雪崩れ込む。

緊張感のあるオープニング2曲から雰囲気が変わり、アルバムに先駆け両A面シングルとしてリリースされた“Winding Road”へと続く。TVアニメ「ゴールデンカムイ」オープニングテーマとなったこの曲は、解放感溢れるギターの音色と、希望に溢れる前向きな歌詞が印象的だ。

4曲目は“Hey Now”。Aメロはプロデュースを手掛けた中野雅之のBOOM BOOM SATELLITES、もしくはアンダーワールドの“Born Slippy”あたりを彷彿させるが、サビではトーキョー・タナカのエモーショナルな歌が映える、マンウィズ流のポジティブなダンス・チューンに仕上がっている。

続く“Please Forgive Me”は、バラード調ではじまりダンサブルなリズムへと展開する美しい楽曲で、高らかに鳴り響くギターの音色と浮遊感のあるサウンドが心地良い。

6曲目は映画「いぬやしき」の主題歌に起用されたキラー・チューン“Take Me Under”。日本語と英語が交錯する歌詞、彼らのルーツにあるグランジ/オルタナティブとパンク/ミクスチャー・ロックを理想的な形で昇華した〈これぞマンウィズ〉と言うべき一曲だ。

東京スカパラダイスオーケストラとの異種格闘ソング“Freak It! feat.東京スカパラダイスオーケストラ”、フックの効いたメロディーとグルーヴを装備した“Break the Contradictions”と続き、9曲目はTVアニメ版「いぬやしき」オープニングテーマに起用された“My Hero”。ストリングスを取り入れた壮大なスケールのヒロイックな楽曲だ。

そして、フォール・アウト・ボーイのパトリック・スタンプがプロデュースを手掛け、映画「新宿スワンII」の主題歌に起用された“Dead End in Tokyo”。冒頭と曲中に挿まれるコーラスはまさしくフォール・アウト・ボーイ風だが、通して聴くと明らかにマンウィズ、というのが不思議だ。

アルバム・タイトル・トラック“Chasing the Horizon”では情感溢れるタナカのボーカルに加え、彼らから世界へ向けてのメッセージとも取れる歌詞にも注目したい。〈僕らこそが 誰も成し遂げなかった何かを追い求め…(中略)…地平線を追いかける者たちなのだ〉という一節は、バンドとしての決意表明とも言えるだろう。

続く“Find You”はアルバム中で唯一、全編日本語詞となるバラードで、映画「覆面系ノイズ」エンディングテーマに起用された楽曲。シンセの音色とギターのフィードバックノイズ、切ないメロディーが涙腺を刺激する。

“Dog Days”はタイトなリズムとソリッドなギターを刻むドライブ感のあるナンバー。そして、最後はジャン・ケンとタナカが叙情的に歌い上げる美メロ・バラード“Sleepwalkers”でアルバムの幕を閉じる。

5匹が繰り出す強靭なバンド・サウンドと、パンクやヘヴィー・ロック、ダンス・ミュージックなど様々な要素を融合した音楽性は更なる高みに達しており、〈世界レベル〉であるのは言わずもがな、もはや地球上で唯一無二となるMWAMサウンドを確立したと言える。

アルバム・リリース後には全国ツアー「Chasing the Horizon Tour 2018」を敢行する彼ら。11月17日(土)にはツアーファイナルとして自身初の阪神甲子園単独ライブが決定。バンド史上最大キャパシティとなる会場で、狼たちがどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか注目したい。(ちなみに、人間以外の生命体がスタジアム単独公演を行うことは世界初とのこと。)

進化し続ける究極の生命体……成功を収めてなお新たな境地を目指し、地平線を追いかけ続ける狼たちは止まらない。