全国各地で日々行われている音楽ライブ。今や〈ライブ産業〉と称されるように、国や都道府県レベルでも重要な産業のひとつとして捉えられている。そんな興行も、ライブやイベントが行える施設がなければ成り立たない。そこで2025年のライブ/エンタメ会場の状況を振り返りながら、音楽シーンに与える影響やこの先の展望について考察した。 *Mikiki編集部


 

新設/休館するライブ会場

TOYOTA ARENA TOKYO、IGアリーナ、GLION ARENA KOBE、あなぶきアリーナ香川……これらは2025年に開業した多目的アリーナ/複合施設だ。このほかにも音楽イベントを行えるホールやライブハウスは全国各地でオープンしており、様々なアーティストが日々利用している。

そうした新設の会場が誕生するのと同時に、老朽化などを理由に休館する場所もある。今年だけ見ても、帝国劇場、日比谷公園大音楽堂、神奈川県民ホールといった歴史的な建物が主に建て替えのため、一旦その歴史に幕を下ろした。

では、今年に新設された会場を振り返りつつ、2026年以降に誕生予定の施設にも目を向けながら今後の展望について色々と考えてみたい。

 

Official髭男dismのライブで幕を開けたTOYOTA ARENA TOKYO

今年10月、東京・青海にTOYOTA ARENA TOKYOがオープンした。パレットタウンの跡地の一部に建設された約1万人収容の同施設は、主にプロバスケットボールチームのアルバルク東京のホームアリーナとして利用されている(B.LEAGUEの2026-27シーズンからはサンロッカーズ渋谷もホームアリーナとして共同利用する予定)。音楽ライブとしては10月11日、12日にOfficial髭男dismがこけら落とし公演を行っており、アクセスの良さなど高い利便性から、今後も多くのアーティストがライブで利用するはずだ。

ご存知の方も多いだろうが、TOYOTA ARENA TOKYOの近くにはZepp DiverCity (TOKYO)のほか、東京ガーデンシアター、有明アリーナと音楽ライブで使用される施設が密集している。また、2026年3月にはテレビ朝日が東京ドリームパークを東京・有明に開業予定で、同施設内にあるSGCホール有明(収容人数は約3,000〜5,000人)も今後ライブで利用されていくはずだ。なお、すでにB’zとサカナクションがこけら落としも兼ねたライブを行うことが決定している。

TOYOTA ARENA TOKYOに関していえば、筆者はこけら落としを行ったOfficial髭男dismのライブで実際に会場へ足を運んでいる。バスケットの試合での利用を前提とした作りになっているため、スタンド席はせり上がるような設計となっており、座席の場所やステージセットにもよるが基本的には目視でアーティストの姿を捉えることができる。アリーナ全体を取り巻くように設置されたLEDビジョンも新鮮で、ヒゲダンはそうした常設設備をフル活用した演出を盛り込んでいた点も素晴らしかった。