札幌を拠点に活動する3人組、ズーカラデルが初の全国流通盤となるミニ・アルバム『夢が醒めたら』をリリース。本作は、ほぼノンプロモーションの情報乏しい状態で一部店舗のみで発表した自主制作盤『リブ・フォーエバー』(2017年)が全国各地の早耳の間で話題となり、ネクスト・ブレイクな日本語ロック・バンドとして注目を集めていた中での、待望の新作だ。

Mikikiで先に掲載した記事では、札幌のバンドが全国で知られるようになった経緯と、彼らが一体どんなバンドなのかを、タワーレコードのバイヤー・清水真広へのインタヴューでお伝えしたが、ここでは新作『夢が醒めたら』の全曲に触れたレヴューを掲載する。

★最近よく聞く3人組、ズーカラデルって何者? 口コミで札幌から全国へと拡がった大型新人をタワレコ・バイヤーが解説

ズーカラデル 夢が醒めたら SPACE SHOWER MUSIC(2018)

 

すでに作られていた3曲と新曲4曲から成る全7曲で構成された『夢が醒めたら』は、ミュージック・ビデオも公開されているリード曲“ダンサーインザルーム”で幕を開ける。

同曲は〈ぼくらひとつではないから どんな気持ちかわからない けれど少しだけわかるんだ〉という歌い出しから、〈言葉にできない〉という想いを抱えて、〈ふたりだけのダンスを少し空いた時間に踊ろう〉というサビに続く。この冒頭からちょっと切なく美しすぎて泣けるのだが、これは見事な一曲である。ソングライターの吉田崇展(ギター/ヴォーカル)の不器用で愛すべきキャラクター、格好つけない人間臭さがじんわりと伝わってくるシンプルでいて厳選された温もりのある言葉。そして、人懐っこいメロディーと軽快でロッキッシュなサウンド。ズーカラデルの音楽性を形成するもの、またその魅力として定評のある部分が、アルバムの冒頭でスパッと提示されているのだ。

『夢が醒めたら』収録曲 "ダンサーインザルーム"
 

前作との間にメンバー・チェンジを経ているので、現在の3人になって久しいが、鷲見こうた(ベース/コーラス)、山岸りょう(ドラムス/コーラス)が歌を引き立たせながら、それぞれ聴きどころのある演奏をしっかり見せているのもいい。彼らが〈見つかる〉最大のきっかけとなった“アニー”(『リブ・フォーエバー』)に匹敵する代表曲になっていきそうな逸曲……と言いたくなるほど、初っ端からバッチリなナンバーだ。ファンならニッコリしてしまうだろうし、新規のリスナーは〈ほかにはどんな曲があるんだろう?〉と、さらにその先へ聴き進めたくなるだろう。

『リブ・フォーエバー』収録曲“アニー”
 

そんなオープナーに続く2曲目は、吉田も影響を受けていると思しき銀杏BOYZ・峯田和伸の書籍と同タイトルの“恋と退屈”。歌詞にGOING STEADYの楽曲“YOU&I”(99年作『BOYS&GIRLS』収録)の〈YOU&I NOW AND FOREVER〉という節も出てくるが、曇天の空の下でバスを待ち続けるという短編小説のようなストーリーの中で浮かび上がってくる〈情けない自分とあの子〉的な世界観は、峯田の世界観と重なって見え、(まだまだ謎の多い)吉田のバックグラウンドも想像できて楽しい。

ミドル・チューン“夢の恋人”、FINLANDSのギター/ヴォーカル、塩入冬湖がゲストで参加するという新機軸を見せ、かねてよりズーカラデルを絶賛していたKANA-BOONの谷口鮪もお気に入りと公言する“パーティーを抜け出して”と続き、ロックンロールの格好良さを携えたファストな5曲目“漂流劇団”は、間違いなくライヴで盛り上がりそうな一曲で、ロック・バンドとしてわれわれを〈キッズ〉な心にさせることも忘れない。ニクイ!

そして6曲目“ビューティ”は、アルバムの中でフェイヴァリットに挙げる人も多そうな、ズーカラデル印(?)なエヴァーグリーンなグッド・メロディーを聴かせるラヴソング。"ダンサーインザルーム"然り、決して派手ではない恋愛や愛を切なく歌うことに長けた彼らだが、この“ビューティ”でも、〈あなたの言葉がやるせない日々を変えてしまうことはないが 君は僕だけのビューティ〉というフレーズを淡々と歌う様にドキッとさせられてしまう。

そしてラスト“フライングマン”では、FINLANDSの塩入冬湖がふたたびゲスト参加(吉田は〈絶対に冬湖氏に歌って欲しかった。漢気に感謝します。最高の歌唱なので、ぜひその耳でご確認ください〉と熱くコメント)。導入の象の行進のようなベースとギターの印象的なリフと、〈おならで月まで行けたらいいな〉というオザケンのあの曲を思わせるフレーズがリフレインされるチャーミングな一曲で、不思議な後味を残す。

……という、〈捨て曲なんて一切ナシ、いまあるいい曲を全部詰め込みました!〉という気概を感じさせる粒ぞろいのニュー・アルバム『夢が醒めたら』。本作は、彼らの等身大の魅力を気負いなくパッケージした、名刺代わりの一枚と言えよう。パンキッシュな青春性や(そのバンド名含め)冗談のような軽やかさと共に、一歩一歩踏みしめるような地に足のついた真面目さも持ち併せる彼らが、息の長いバンドとなることを予感させる骨太な一作だ。

 

なお、彼らは12月14日(金)札幌SOUND CRUE公演を皮切りに、東名阪を廻るツアーを開催。札幌以外ではなかなか頻繁には観られない大型新人の現在の姿を目撃しに、ぜひ足を運んでみてほしい。

『リブ・フォーエバー』収録曲“アニー”の2018年3月のライヴ映像

 


Live Information

〈ズーカラデル NEW MINI ALBUM『夢が醒めたら』発売記念 インストアイベント〉
12月8日(土)タワーレコード新宿店 20:30~
12月16日(日)タワーレコード梅田大阪マルビル店 16:00~
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〈地獄の入り口 TOUR〉
12月14日(金)札幌SOUND CRUE
12月18日(火)大阪 Live House Pangea
12月20日(木)下北沢 BASEMENT BAR
チケット:2,800円(+1D)
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