Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第96回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【田中亮太】

Nao Kawamura “error”

Mikikiが立ち上げ当初からプッシュしているシンガーのNao Kawamuraさん。ソロ名義では約1年ぶりとなる新曲を届けてくれました。これまでよりもエレクトロニックなサウンドを打ち出し、緻密に編まれた電子音のうえで跳ねるように歌を紡いでいます。激烈な生ドラムが入ってくるコーラスもかっこいい。印象的だった黒髪を白髪に染め変えた彼女のモード・チェンジを告げる1曲。引き続き大プッシュです!

 

fA-Fa “Snaky Scale”

関西を拠点に活動しているハウス/テクノDJのto_ru_(とーる)さんによるソロ・プロジェクト、fA-Fa。彼が先週リリースしたEP『Snaky Scale』からの表題曲です。仄暗い深海を泳いでいるかのような浮遊感と、どこか丸みを感じさせる不思議な人懐こさとが共存。トゥー・ローン・スウォーズメン(Two Lone Swordsmen)とDJパイソン(DJ Python)の狭間にあるエレクトロといった雰囲気ですごくいいです。

 

片想い “踊る理由 feat 鴨田潤”(live at 2020.12.''片想いのゆく年くる年'')

片想いが2020年12月末に開催した配信ライブ〈片想いのゆく年くる年〉より、鴨田潤さんをフィーチャーした“踊る理由”の映像が公開されました。ダンス・ミュージックのもたらすエモーショナルな瞬間を東京きってのインディー・ソウル・バンドが切り取った“踊る理由”は説明不要の2010年代クラシック。そして、鴨田さんは昨年寺尾紗穂さんとリリースしたEP『二』でこの曲への返歌“The Reason To Dance”を発表していました。つまり、このライブ・ヴァージョンは2つの〈踊る理由〉を合わせた夢の共演というわけです。最高。

オラリーさんの〈僕が泣いてる理由なんてわからないだろう〉というコーラスにすかさず重なる鴨田さんの〈何言っているんだ/泣いている君のそばにずっといた理由がわかるかい?〉というフレーズ。どうしたって目頭が熱くなる。

 

【酒井優考】

ズーカラデル “ブギーバック”

来週リリースのファースト・デジタルEP『若者たち』収録の、リーガルリリーのたかはしほのかをゲストコーラスに迎えた楽曲。なんか人生って綺麗でカッコいいことばかりじゃないじゃないですか。そういう紆余曲折を経た人間の切なさみたいなものが染み出てる気がします。気がするだけです。

 

KALMA “さくら”

舞い散る桜を〈シャラララ〉という音とユニゾンの歌で表現したKALMA流青春ロック。今年は綺麗な桜が見れるかしら。

 

BurnQue “叫べ少年”

めっちゃ密(笑)。Mikikiでは2月24日(水)リリースの初アルバム『激情』について、めっちゃ密なインタビューを掲載予定です。

 

【天野龍太郎】

冨田ラボ “MIXTAPE”

いや、これ、ほんとにすごくないですか? 恥ずかしながら、〈すごい〉しか言葉が出てこなくなりました。冨田ラボ、ひさびさの新曲“MIXTAPE”。冨田恵一さんが2020年に書き下ろしたメロディーやビートをひとつにまとめ上げたのがこの曲らしいのですが、それぞれのアイデアをひとつの曲へと仕上げずに、断片のまま繋ぎ合わせた作品にしてしまう発想に驚きました。まさに、冨田ラボによる壮大な音楽絵巻。特にびっくりしたのが7分36秒過ぎのスクリューしたパートで、これってヴェイパーウェイヴ(というかヴェクトロイド)ですよね。あと、当然のようにというか、いつも以上にドラムのプログラミングが尋常ではなくてぶっとばされます。プリンスの『Lovesexy』みたいに、この手法で40分間の作品を作ってほしいくらい。YouTubeのショート・ヴァージョンもいいのですが、ぜひSpotifyなどでフルで聴いてほしい曲です。配信リンクはこちら

 

ECD “ECD のジャスト ア フレンド”

ECDが生前に撮影していたという、『FJCD-015』(2014年)収録曲のミュージック・ビデオが公開に。〈へえ〉と思ってみたところ、〈えっ、なんでそうなるの!?〉と腰を抜かす超展開に笑うしかありませんでした。Moment Joonによる感動的なコラムをはじめ、没後3年を迎えた1月24日、TwitterではECDにまつわるいろいろな思い出が語られていて、ああ、本当にリスペクトされたアーティストだったんだな、と感じ入った矢先にこれっていう……(笑)。

 

る鹿 “空洞です”

歌声を聴いた瞬間にノックアウトされました。中国・重慶出身で、青文字系ファッション誌のモデルとして有名だという〈る鹿(ルカ)〉のデビュー・シングル。タイトルからわかるとおり、ゆらゆら帝国の名曲のカヴァーです。歌はもちろんですが、サウンド・プロデュースが石井マサユキさんでミキシングがZAKさん、という強力な布陣で作られているサイケデリック・フォーク風のアレンジや音像も素晴らしい(特に、ドラムが入ってくるタイミングが完璧)。明日2月10日(水)には12インチ・シングルがリリース。配信リンクはこちら

 

pool$ide feat. Lil Soft Tennis “shui-shun”

〈水〉へのオブセッションを作品に昇華している(?)兵庫・神戸のプロデューサー、pool$ide。彼が3月3日(水)にSauna Coolからリリースするニュー・アルバム『hydrate』からの一曲です。客演は、TOWER DOORSが推すアーティストで、いま注目を集めているLil Soft Tennis。一言でいうと、めちゃくちゃハマっています。ユーモラスでトロピカル、そしてエッジーなpool$ideのビートとLil Soft Tennisのラップ/歌を聴いて、2人とも不思議な才能の持ち主だと改めて思いました。

 

Maher Shalal Hash Baz『1986.2.23 国立公民館B1ホール』トレイラー

この一週間は驚きの出会いが多かったです。こちらの『1986.2.23 国立公民館B1ホール』もTwitterで見かけて、〈マヘルのこんな貴重な録音がCD化されたんだ!〉と驚き、急いで買いました。そのトレイラーは、CDの組み立て作業を捉えた微笑ましい内容。注文したらすぐに届いたので最近よく聴いているのですが、マヘルのブレなさに感動しきり。また、個人的に国立という街にすごく思い入れがあるので、余計にじーんとなりました(『マヘル国立気分』という84~85年録音の名盤もありますよね)。あと、工藤冬里さんによるセルフ・ライナーノーツがめちゃくちゃいい。『1986.2.23 国立公民館B1ホール』はBandcampSTORESで販売中。