初期ECMらしい即興演奏によるアルバムと言いうと語弊があるかもしれないが、オールド・スクーラーにはたまらないノイズがここにはある、ということは伝わるかもしれない。無音の次に美しい音を提供するレーベルというECMのイメージは容易に透明度の高い響きを連想させがちだけれど、概念的には無音の隣にあるべきものはノイズだったりするのだ。デヴィッド・トーンとティム・バーンそれにチェス・スミスというフォーメイションは、こうしたECMにつきまとう隠された波乱と混乱をナイーヴに表出する。どこにいるのかわからない、喪失感や前後不覚の感じこそが、ノイズと無音が持つ、醍醐味と確認。