世の無関心へ提示する自分たちらしさ
初の全国流通盤となるミニ・アルバム『Burden』から3か月でリリースされる、ファースト・アルバム『Apathy』。今作は、短期間でクリエイティヴィティーと音楽的な筋肉を鍛え上げたétéの、高い体温や心拍を伝えるアルバムとなった。「自主制作からレーベルという土壌を得て感じたのは、自分たちらしさを提示する大事さ。それは僕らがキャッチーになることやポップになることではなくて、僕らがやっていることをどれだけ聴かせられるかだ」とオキタユウキ(ヴォーカル/ギター)は言う。
「前作『Burden』が出来たことは大きかったですね。自分でもたくさん聴いたし、そのうえでいい音源だなって思った。それが自信になったんだと思いますね。もっとやれるなって、やりたいことがたくさん出てきた」(オキタ)。
サウンド面は大きく広がった。変拍子とアルペジオ、ポエトリー・リーディングによるポリリズムで、日常の違和感を浮き彫りにする前作からの流れを磨きつつ、エレクトロとの折衷や、メタリックな要素も貪欲に咀嚼。急速に新陳代謝を上げながらétéサウンドを更新している。
「新しい感覚のものがどんどん出てくる。だから、練習をして以前よりも上手くなっているはずなのに、レコーディングにかかる時間が変わらないっていうのがあって(笑)。でもそれが楽しかったんですよね」(ヤマダナオト、ベース)。
「オキタは、ある程度デモが出来上がるまでは聴かせてくれないんです。ただ、〈ブラスト・ビートやるから練習しておいて〉とかはあるので。来るべきときのためにインプットをしておこうという感じになっています」(小室響、ドラムス)。
3ピースのバンドではあるが、作品においてはソングライターであるオキタの設計図に基づいて細部まで音色を丹念に描きこんでいく。思い描く音世界を立体化していくレコーディングは刺激的な時間だ。
「ミックスが上がって、いちばん感動したのは“とおくなるのは、”ですね。もともとライヴでは同期なしで、3人の音だけでやっていた曲なんです。そこから、レコーディングでめざす音像や、空気感の広がりを実現できた実感がありました」(ヤマダ)。
奥行きのあるシンバルや弓でギターを弾くなど繊細な音のレイヤーを生み、〈言葉にできない それなら どうしたら〉──そんなふうに始まる“とおくなるのは、”の言い知れない寂寞とした感触を表現した。
「リード曲“ruminator”も挑戦でしたね。特に僕とヤマダはこういうメタルコアっぽいジャンルはあまり通ってないし、やってみようという発想もなかったので」(小室)。
「オキタのデモの仮タイトルが平仮名で〈じぇんと〉(Djent:プログレッシヴ・メタルの派生ジャンル)で。プレイしてるときは大丈夫?っていうのがあったけど、étéのものになりましたね」(ヤマダ)。
étéの音楽についてオキタは「啓蒙的ではあるけれど、最終的に湧き上がったその感情に名前をつけるのは聴き手自身」だと語る。詩的なフロウで、しかし痛烈なワードで〈Apathy〉=無関心、個性や個人の意思よりもムードが偏重される社会や人間関係に疑問符を投げかける。
「ライヴでもよく言うんですよね、〈人間が見えないんだよ〉って(笑)。人間関係や社会情勢も然り、考えることをやめてしまっているように見える。いつかマズくなることはわかっていても、そのままでいる感覚で。みんながみんなそうであるのは、病的な状態だなって思う」(オキタ)。
徹底して磨かれたétéの音楽が凛としたステートメントを放つ一作の完成だ。