原点回帰以上の熱量でバンドのコアを表現した傑作!
MOP of HEADがコドモメンタルINC.への移籍後初となるフル・アルバム『maverick』を完成させた。前作『Vitalize』ではメンバーが随所でヴォーカルを披露し、その後のミニ・アルバム2枚ではさまざまなヴォーカリストを起用していた彼らだが、今回はゲストなし。〈インストによるダンス・ミュージック〉というバンドのコアを成す要素だけで勝負する作品となった。
「今作はある意味で原点回帰的な要素が強くて、初めからインストで一枚作ろうと決めていました。フィーチャリングの作品を経て、改めて僕たちの強みもわかったし、そのうえで自分たちが2019年に何を出すかということをとても考えました。結果、自分たちの音楽に向き合う時間が長くなったことでMOP of HEADというバンドの原型が整った感じがあります」(George:以下同)。
アルバムを通してひときわ耳を惹くのが、90年代初頭のハードコア・テクノのエッセンスだ。“Gabber Juice”ではロッテルダム産ハードコア=ガバの歪みまくったキックを轟かせ、“Revolution”ではレイヴ仕様の高速ブレイクビーツからエモみ溢れるブラスト・ビートへと繋げてみせる。一方で、90sリスニング・テクノの浮遊感とメロウネスを溶け込ませた“Vortex”のようなトラックもあり、近い時代の対極的なスタイルが平然と並んでいる様もおもしろい。
「“Gabber Juice”に関しては、単純にガバというジャンルをバンドに落とし込んだらおもしろそうだという発想から作りました。あと、それができるバンドもなかなかいないのかなと思い、実験的な意味でも向き合いました。作曲のルーティンとして1曲できたら対極なものを作りたくなる傾向にあるので、自然とハードなものもメロウなものも混在する作品になったと思います」。
随所で立ち現れるエスニックな旋律も本作の特色のひとつだろう。Georgeがアルバムのキーとなる曲として挙げる“Andalucia”では現行のベース・ミュージック的な骨格のアンサンブルからアラビックなフレーズが飛び出し、“Shang-Hi”ではオリエンタルなメロディーとラフ&ラグドなサンプリング・ビーツが重ねられる。エキゾなあれこれをピックアップしながら、それとは別種のサウンドとミックスして多様なヴァリエーションの楽曲を成立させる──その手つきが、キャリアを通じてクロスオーヴァーなセンスを培ってきたMOP of HEADらしい。
「“Andalucia”は、これまで使っていないコードの手法にトライして、この楽曲の持つ特有な緊張感を作ることができたので納得がいっている曲です。今作のアプローチとして、民族感を出したい、無国籍な音楽を作りたいと思ったのですが、自然と民族音楽的なものと違ったジャンルを混ぜることができました。ラテンの要素があるのに音はレイヴだったり、もともと持っていたMOP of HEADのミクスチャー的な側面を改めて引き出してみたという感じです。楽曲へのアプローチは、ここ数年、いろいろなアーティストのお手伝いをするようになって広がってきたのだと思います」。
そのようにハードなクラブ・ミュージックを取り込む一方で、本作は、ガレージ・ハード・ロックとでも言うべき“Jetlag”に代表されるアグレッシヴなバンド・サウンドを提示する作品でもある。原点回帰を意識しつつ、原点以上の熱量を湛えた楽曲ばかりが詰め込まれているのだ。バンドとしての成熟を遂げながら、初期衝動を超える勢いを携えた彼らの姿は痛快で頼もしい。
「バンドを10年以上やっていますが、自分たちのオリジナルがここで出来たなと。さらに自分たちと向き合い、世の中の流れとは関係なく、自分たちが作るべき音楽をこれからも作っていこうと、いままで以上に思えました」。
MOP of HEADの過去作を一部紹介。