甘美にして鋭利な歌声と叙情と激情の入り交じったオルタナなサウンド――型にはまらない音と言葉で次の地平を探求する新進気鋭の3ピースが登場。この静謐な野蛮に撃たれろ!!
目に飛び込んでくるものにスピーディーにシャッターを切っていくような、感覚的なモノローグでその音楽は始まる。リアルな景色と、心のフィルターを通した、歪みや、甘美なノイズがかった景色が入り混じるその街は、雑踏もネオンもあるけれど、とても静かで、独自の時間を刻んでいる。ぽつねんとしたその孤独の静けさが、居心地の良いものか、不安で寂しいものと感じるかは、聴く人の心の在りようにもよるのかもしれないけれど、どちらにしてもここにある〈なにか〉にふと耳を奪われる。「孤独でいたいというよりは、ひとりであることが重要だなと。ひとりじゃなきゃ、ひとりを知れないというか。孤独を理解したうえで、相対していたい」と、ソングライターのオキタユウキは語る。été(エテ)の3人が紡ぐ音楽には、そんなひとりの、大事な時間や魅力がある。
オキタユウキ(ヴォーカル/ギター)、ヤマダナオト(ベース)、小室響(ドラムス)により、東京を拠点として活動するété。「最初の頃は、オキタがシャウトをする激しい曲も多かった」とヤマダは語るが、étéの核となるものが出来上がったのは、このたびリリースされるミニ・アルバム『Burden』に収録された“眠れる街の中で”が出来たことが大きいという。オキタの中性的なヴォーカルによるポエトリー・リーディングで始まる“眠れる街の中で”は、ポスト・ロック的な変則拍子や型にはまらない展開を遂げていく曲となった。
「以前もそういう曲はあったし、もともと曲の自由度は高かったと思うんです。ただ“眠れる街の中で”は歌詞が先に出来て。この歌詞は、歌うというよりは〈読もう〉という感じがあった。そのほうが自分たちの良さも出せるし、おもしろいなって思ったんです」(オキタ)。
「デモが来たときは、いきなりどうした?っていう感じでしたけど、めっちゃカッコよかったので」(ヤマダ)。
後から加入した小室が最初に聴いたのも“眠れる街の中で”のデモだった。それまでのバンドではテクニカルなプレイはしていなかったが、ポスト・ロックからアイドルまで幅広く吸収し磨いてきたスキルをétéで解放。メンバーもそれぞれ、ハードコアからポストロック、J-Popをルーツに、étéという器の中で自由にアウトプット。『Burden』は、サウンド的により幅広い作品になった。アブストラクトなサウンドに乗せてリーディングする曲もあれば、歌心のあるメロウなサウンドやドラマを紡ぐ曲、言葉の弾丸を撃ち込んでいく攻撃的な曲。いずれもアンサンブルの妙味が光り、歌の湛える空気感が冴えるものだ。
「曲が出来てから歌詞がくるので、歌詞が出来た段階でまた、ここで強弱を変えようとか、アレンジが決まりますね。ただ、歌詞の内容については、オキタに〈こうだよね〉っていう答え合わせ的なことはしたくなくて、自分の解釈でフレーズを考えたり、どこにピークを持っていくかを考えます」(ヤマダ)。
「僕は正直、歌詞について理解と共感はあまりしてないというか。そのぶん、オキタの歌う歌を引き立たせつつ、自分の色をどう出すかというのを常に考えてますね。ただ、今回のアルバムだと“ドルシネア”のデモがきたときは、これにどうやって歌が乗るんだろう?って思った」(小室)。
オキタの歌詞は、冒頭にも述べたように徹底して一人称視点のもの。音には3人それぞれの思考や視点があり、その化学反応が刺激を生んでいる。この感覚は、〈背負う〉を意味するタイトル『Burden』にも通じる。
「いろんな人を見ていて常々思うのが、人間を感じないなっていうか。見ろって言われたものを見て、聞けって言われたものを聞いて。それじゃまったく意思が見えないし、意味がない。自分が選んだことは、自分ひとりが背負って生きなきゃいけないんだよっていうことを描きたかった」(オキタ)。
「大袈裟な話ではなくて、時代、シーンを作らなきゃなとは思っています」とも語るオキタ。その姿勢と思考を隅々に行き渡らせた音楽は、静謐だが強かだ。