歴史は現在の状況がどのようにして出来上がったのかを過去に遡って知るために時間軸に沿って編集された出来事や知の集積だと、端的に言える。故に歴史のあり様は視点の揺れにしたがいその姿は変化する。この本 『西洋音楽の歴史』は、作曲家、エデュケーターである近藤譲が綴った音楽史であり、その題名が示す通り西洋というドメインに囲まれた音楽の歴史だ。つまりまず西洋というカテゴリーがあるわけで、我々東洋人から対象化された西洋というコンセプトがその歴史の出発点となるのだが、岩波ジュニア新書が想定する日本の若者にとっての西洋がどんな領域で、どんなカテゴリーなのか不安になってきた。