なんと初々しい感受性に彩られたブラームス演奏だろう! ヴァイオリンの音は雨に濡れた若葉のように瑞々しく、しなやかなフレージングには含羞の風情が漂い、ブラームスの美しい旋律が早春の香りを放ちつつ、様々な感情に揺れ動きながら、語るように描き出されている。2017年ブラームス国際コンクール優勝者の中村太地は、コンクールゆかりの作曲家をデビュー盤に選び、今の彼にしかできない表現で見事な成功を収めている。ヴェテラン、江口玲がスタインウェイ・ピアノの1887年ヴィンテージ・モデルを用い、中村のヴァイオリンにふさわしい透明感のある音色で、ぴったりとかみ合ってゆく絶妙さも特筆される。