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過去作から振り返るOYATの歩み

 いまやレーベルメイトとなったceroが『Obscure Ride』を発表した2015年。シティー・ポップが何度目かの隆盛を見せ、ソウル/ジャズ/ヒップホップが日本のインディー・シーンのなかで次々と洗練されたポップスへ変換されていた当時、野太い歌声と泥臭いメロウネスを擁する思い出野郎Aチームの初アルバム『WEEKEND SOUL BAND』は、途轍もないインパクトだった。プロデューサーはブラック・フィールをスタイリッシュに注入する名手、mabanua。ただ、ここでの彼は整えすぎないバランス感覚に腐心した様子で、そうした週末ソウル・バンドの個性は以降も更新されていく。

 KAKUBARHYTHMへ移籍して発表された2作目『夜のすべて』は、さまざまなソウルのテイストを我流のポップ・ミュージックとして提示した作品に。自然と身体が揺れるグルーヴに日常の悲喜こもごもを浮かべつつ、その言葉はよりコンシャスな意味合いも深めており、なかでもクラブ・ヒットを記録した“ダンスに間に合う”は切実な真意が込められた逸曲と言えるだろう。

 そして、Negiccoやlyrical schoolへの楽曲提供を経て完成させたのが昨年のEP『楽しく暮らそう』。制作期間のバンドの音楽的なモードだったシカゴ/ノーザン・ソウルのエッセンスがたっぷりの表題曲や、「ジャッキー・ウィルソン歌謡をイメージしていた」という“去った!”に始まり、晩夏に似合うファンク曲や、「ゴスペルをモダンに解釈しようとしたら合唱になった(笑)」という“僕らのソウルミュージック”といった新たな側面も垣間見える全5曲が収められている。

なお、この際に参考としていたのがマルーン5の鍵盤奏者でもあるシンガー・ソングライターで、その〈ゴスペル感〉は今回の新作にも引き継がれている模様。他、メンバーの最近のお気に入り盤としては、チカーノ・ソウルのコンピ『Danny Trejo Presents Chicano Soul Shop Vol.1』やディアンジェロ界隈のギタリスト、アイザイア・シャーキーの名も挙がっていたので、そこから今のバンドが目を向けている先を探ってみてはいかがだろう。 *bounce編集部