KAKUBARHYTHM15周年(第1回)
[ 特集 ]人懐っこさの底にあるDIY精神で新しい価値観を提示し、さりげなく日本の音楽シーンの流れを変えてきた信頼のレーベル。その歴史を3号連続で振り返ります!!

 KAKUBARHYTHMの初リリース作品となるYOUR SONG IS GOOD(以下YSIG)の7インチ・シングル『BIG STOMACH, BIG MOUTH/LOVE GENERATION』が世に出たのは2002年3月のこと。以降、15年に渡ってこのレーベルは数々の傑作を送り出し続けてきた。SAKEROCK、MU-STARS、イルリメ、キセル、二階堂和美、(((さらうんど)))などなどジャンルは多種多様だが、その一方で、所属アーティストには〈KAKUBARHYTHMっぽさ〉とも表現できそうな共通した匂いがある。そうしたレーベルの在り方や所属アーティスト同士のユルい繋がりは、後進レーベルにとってめざすべき目標ともなってきた。

 KAKUBARHYTHMの代表である角張渉は、同レーベルの立ち上げ以前から安孫子真哉(元・銀杏BOYZ)とSTIFFEEN RECORDSを運営。FRUITY(YSIGのJxJxが参加していた伝説のスカ・パンク・バンド)が自主レーベルから出したテープ・コンピ『MEDIUM RARE COMP』をお手本としてレーベル運営を始め、コンピ『SMALL CIRCLE OF ROCK』などをリリースしていた。

 2001年3月、そんな角張がYSIGをトリとしたイヴェントを企画する。その名も〈KAKUBARHYTHM〉。翌年3月にはその名を冠した新レーベルを設立し、第1弾として冒頭のYSIGの7インチをリリースする。

 なお、レーベル設立当初の角張は某レコード店の店員でもあった。STIFFEEN RECORDS時代には東京・西荻窪のライヴハウス、WATTSでバイトしていた経験もあり、そうした経験のなかで培われた角張の現場感覚と持ち前のセンスはそのままKAKUBARHYTHMの最大の武器となっていく。

 ブレイクビーツ・ユニットのMU-STARSや元FRUITYのツカモトコウタ率いるSUGARHILL DOWNTOWN ORCHESTRA、BREAKfASTと日本脳炎のスプリットなどを発表するなか、レーベルにとって転機のひとつとなったのが2005年から始まったSAKEROCKのリリースだ。絶妙なエキゾ感とユーモアを伴ったその音楽世界はKAKUBARHYTHMにとっても新境地を切り拓くものとなり、のちのceroやVIDEOTAPEMUSICの登場も用意することに。

 先述したように、KAKUBARHYTHMの作品群にはひとつのジャンルに括ることのできない多様性があり、そのうえでどこかに〈KAKUBARHYTHMっぽさ〉もあるのが特徴だ。その特徴を言葉にするならば、所属アーティストの多くがかなりマニアックなリスナー気質の持ち主であり、遊び心とユーモアを併せ持っているということだろう。それでいて、KAKUBARHYTHMの作品群には時代の空気感もふわりと盛り込まれている。友人の部屋で好きなレコードを持ち寄ってワイワイやっているような楽しさがありながらも、世界各地で起こっている現実にも敏感。そんな感覚がどの作品にも宿っているのだ。

 パッケージ・ビジネスの不況が次第に囁かれるようになった2000年代の中盤以降、KAKUBARHYTHMの存在感はさらに増していく。根底にあるのは、角張が90年代後半のライヴハウスで学んだインディー・パンク・シーンのDIY魂であり、過去の文化をリサイクルして新しい価値観を提示するヒップホップ・カルチャーだ。近年ではスカートや思い出野郎Aチームも加わり、かつてはYSIGしかいなかった所属アーティストもずいぶんと増えた。それでもなお、レーベルの軸がブレることはない。のらりくらり続けているようでいて、根っこにあるのはDIY精神の塊。そんなKAKUBARHYTHMの歩みが止まることはしばらくなさそうだ。 *大石 始

KAKUBARHYTHMからのリイシュー作品を一部紹介。

 

この8月にKAKUBARHYTHMへマネジメント業務を移籍した在日ファンクの2016年作『レインボー』(コロムビア)

 


〈カクバリズム 15 Years Anniversary Special〉開催!!

 KAKUBARHYTHMの設立15周年を記念して、5都市においてライヴ・イヴェント〈カクバリズム 15 Years Anniversary Special〉の開催が決定! 8月に入ってマネジメント業務の移籍を発表した在日ファンクはもちろん、二階堂和美 with Gentle Forest Sextet、スチャダラパー、YOUR SONG IS GOOD、cero、キセル、VIDEOTAPEMUSIC、スカート、MU-STARS、片想い、思い出野郎Aチーム、toeなど、レーベル所属のアーティストに留まらず、多彩なアクトが続々と登場。9月16日(土)~9月18日(月・祝)の京都・磔磔、9月23日(土・祝)の北海道・Zepp Sapporo、10月9日(月・祝)の広島CLUB QUATTRO、10月22日(日)の大阪・なんばHatch、11月5日(日)の東京・新木場STUDIO COASTと、チケットは各プレイガイド他で取り扱い中です。公演ごとに出演者が異なるので、詳細は特設サイト〈http://kakubarhythm.com/special/15th/〉でぜひチェックを!

 

オリジナル・アルバムで振り返るKAKUBARHYTHMの15年(その1)

YOUR SONG IS GOOD COME ON KAKUBARHYTHM(2002)

KAKUBARHYTHMの長男とも言えるインスト・バンド。本作はアーチー・ベル&ザ・ドレルズ“Tighten up”系のファンキーなダンス曲“PAPA'S GROOVE”で幕を開ける彼ら初のCD作品だ。ミニ・アルバムながら多様なアイデアが満載。カリプソ風味の終曲“RELAXIN'”も心地良い余韻を残す。 *大石

 

YOUR SONG IS GOOD YOUR SONG IS GOOD KAKUBARHYTHM(2004)

汗が迸るライヴ・パフォーマンスの噂も広がるなかでリリースされたファースト・フル・アルバム。各種カリブ音楽やその他のダンス・ミュージックの要素をギッチギチに詰め込みながら、全14曲をハイテンションで走り抜ける。初の歌モノ“WALKIN' WALKIN'”などライヴの定番曲も収録。 *大石

 

SAKEROCK LIFE CYCLE KAKUBARHYTHM(2005)

星野源らが在籍したエキゾなインスト・バンドの初フル・アルバム。洒脱な筆致の楽曲を、トロンボーンやマリンバが踊る軽妙なグルーヴを宿したアンサンブルで展開しつつ、ユル過ぎるスキャットなどのユーモラスな要素を照れ隠しのようにまぶしたり。初期SAKEROCKの無二のバランス感を確立させた名作だ。 *澤田

 

MU-STARS CHECK 1,2 KAKUBARHYTHM(2005)

KAKUBARHYTHMのヒップホップ・サイドを代表する2人組ユニットのファースト・フル・アルバム。YSIGやこの後レーベルメイトとなるイルリメの他、BREAKfASTの森本雑感などジャンルを越えたゲスト陣が参加している。ポップかつカラフルなブレイクビーツ・アルバムだ。 *大石

 

YOUR SONG IS GOOD FEVER KAKUBARHYTHM/ユニバーサル(2006)

BEAT CRUSADERSとのコラボ盤を挿み、ユニバーサルとのダブルネームでメジャーへ。7インチのみのリリースだった“SUPER SOUL MEETIN'”のリテイク版“超ソウルミーティン”も含む本作は、ビークルとのステージや大型フェス出演を経て、さらに高まったライヴ巧者ぶりが刻まれた一枚に。 *土田

 

SAKEROCK songs of instrumental KAKUBARHYTHM(2006)

永積タカシの歌唱による“インストバンドの唄”や星野源が歌うハナ肇とクレージーキャッツ“スーダラ節”、ゲーム「MOTHER」の名曲カヴァーなどを動員し、バンドの枠組みを華やかに拡張した2作目。カテゴライズし難いがどこまでも人懐っこいバンドの在り様を、タイトルに集約されるアプローチでキャッチーに提示した。 *澤田

 

YOUR SONG IS GOOD HOT! HOT! HOT! HOT! HOT! HOT! KAKUBARHYTHM/ユニバーサル(2007)

イルリメやMU-STARSといったレーベル周辺アクトに加え、SOILやSLY MONGOOSEの面々、松田“チャーベ”岳二ら多くのゲストと共に、デビュー以来一貫して磨いてきたルーツィーな南国ダンス音楽路線のひとつの集大成を築いた一枚。歌モノの初シングル“あいつによろしく”もここに収録。 *土田

 

イルリメ イルリメ・ア・ゴーゴー KAKUBARHYTHM(2007)

レフトフィールドなラッパー/トラックメイカーと認知されていたイルリメが、エンテーテイナーとしての才覚を炸裂させたKAKUBA-RHYTHM移籍作。YSIGや二階堂和美らも招き、ロックンロールやスウィング歌謡といったスタイルのフロア沸騰チューンばかりを一気呵成に畳み掛けている。 *澤田

 

キセル magic hour KAKUBARHYTHM(2008)

辻村豪文&友晴の兄弟デュオは本作よりKAKUBARHYTHMへ参画。靄のようなサイケ感とノスタルジックな歌声がゆったりと溶け合う彼らの美点は、〈昼夜の狭間の時間帯を音楽で表現する〉というテーマにピッタリだ。民話/民謡のテイストを盛り込んだ“枯れ木に花”といった新たな試みも。 *土田

 

YOUR SONG IS GOOD THE ACTION KAKUBARHYTHM/ユニバーサル(2008)

我流のスカコア“A MAN FROM THE NEW TOWN”がいきなり飛び出す先行EP『THE ReACTION E.P.』で見せた兆しそのままに、結成10周年のアニヴァーサリー・イヤーに向かった先はパンク・ロック。出自の再燃とも言えようが、持ち前の常夏サウンドに縦のグルーヴが加わって、テンションの高さはもう最高潮に! *土田

 

SAKEROCK ホニャララ KAKUBARHYTHM(2008)

バンドにとっては初の完全インスト作品となった3作目。持ち前のユーモアもたっぷり詰め込んだストレンジでファニーな音楽世界が展開されているが、ポップさは決して失われていない。グラビアなども掲載したブックレットがまた遊び心満載で、スタッフも含めワイワイ制作している光景が目に浮かぶ。 *大石

 

イルリメ メイド イン ジャパニーズ KAKUBARHYTHM(2009)

前作の賑やかな勢いはそのままに、よりポップス志向を強めた一枚。シリコン・ティーンズばりの打ち込みオールディーズ“ミュージック”をはじめとするご機嫌な歌モノの数々にワクワクさせられる一方で、終盤に並ぶ“さよならに飛び乗れ”のようなセンティメンタルな楽曲の詩情に胸を締め付けられる。 *澤田