安全地帯 ALL TIME BEST「35」~35th Anniversary Tour 2017~LIVE IN 日本武道館 Columbia (2019)

JAPAN Rock Pop
2019.11.22

中央ステージに吊るされた〈Victory〉を意味する〈V〉の垂れ幕。暗転してディジュリドゥなどをフィーチャーしたプリミティヴなサウンドが鳴り響くと徐々に緊張が高まり、5人のメンバーが登場し演奏が始まる。2017年にデビュー35周年を迎えた安全地帯。その記念すべき年に行われた日本武道館ライヴを克明に捉えた映像が、ついにリリースされた。〈ALL TIME BEST「35」〉とタイトルがついている通り、35年間の代表曲を披露したライヴは、2日間で2万5千人を魅了したという記念碑的なライヴでもあった。

安全地帯は御存知の通り、お茶の間に浸透した日本ロック・バンドの先駆けであり、その後何度かの活動休止を経ながら、いまもなお精力的に活動している。デビュー時からメンバーは変わらず、レコーディング作品だけでなくライヴにおいてもそのヴィヴィッドなバンド・サウンドは健在だ。冒頭にいきなり大ヒット曲“ワインレッドの心”を組み入れた構成も、きっとその自信の表れだろう。キーボードやパーカッションなど数人のサポート・メンバーがいるが、80年代風のソリッドなリズムや豪快に弾き鳴らすエレクトリック・ギターの音色は、安全地帯の世界観を揺るがすことなく響いてくる。

しかし、なんといっても主役はヴォーカルの玉置浩二であることに異論はないだろう。若手のヴォーカリストを含めた多くのアーティストに影響を与え続ける日本随一の歌い手は、パフォーマーとしても第一級であることがこのライヴ映像を観るとよくわかる。楽曲によってはフェイクも多用するが、基本的には個々の楽曲に詰め込まれた詞とメロディーに命を与えるかのごとく、圧倒的な声量と表現力で歌い綴っていく。とりわけ、中盤に披露される“恋の予感”や“Friend”のようなバラードにおける哀しみと切なさ、大ヒットナンバー“悲しみにさよなら”のようなスケール感と包容力は、当時よりもさらにパワーアップし、まさに魂の歌い手としか言いようがない。そして、メンバーとのアイ・コンタクトやふとした時に見せる笑顔などからは、いかに充実したライヴであったかが伝わってくるのだ。

前述の楽曲を含め、“熱視線”、“碧い瞳のエリス”、“じれったい”といった大ヒット・チューンはもちろんのこと、“デリカシー”や“プラトニック>DANCE”、“銀色のピストル”などの通好みな楽曲が選ばれているのも彼ららしいし、DJによるスクラッチやチェロなどを交えた新たなアプローチによるアンサンブルもまた、彼らが過去に頼るのでなく、いまの時代と向き合い安全地帯ならではのサウンドを作り上げようという意思が伝わる。その上で、彼らが生み出してきた名曲群を、永遠のスタンダードとしてファンに届けようとしている。単に節目の記念ライヴではなく、常に創造を続けるロック・バンドの、強い意志が溢れ出た貴重なドキュメントなのである。

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