幅広い時代と歌い手に託してもなお輝く、メロディーメイカーの真髄

 時代時代の空気を含んださまざまなアレンジに彩られながら、核となる芳醇なメロディがその奥から輝きを放つ。長い時間のあいだで玉置浩二がこしらえてきた楽曲のそれは、むしろ他者への提供楽曲によって、よりわかりやすく感じ取ることができるんじゃないだろうか。

 昨年末に編まれた『玉置浩二の音楽世界』はまさにそれを思い知ったコンピレーションで、好評を得ての続編が、今回もCD 2枚組というボリュームで届けられた。資料性はもちろんのこと、いい曲、いい歌がいっぱい詰まったアルバムとして、とにかく楽しい。

VARIOUS ARTISTS 『玉置浩二の音楽世界II』 コロムビア(2025)

 それにしても、だ。玉置浩二に曲を書いてもらえるというのは、歌手にとってどういう気分なのだろう。すでに独自の世界観をその歌声で作り上げている人、アイドルや俳優のように本業が歌手ではない人、そのなかでさらに男性、女性によって感覚は違うと思う。

 あくまでも想像だが、独自の世界観をもつシンガーは、日本でいちばん歌がうまい人と言われる玉置浩二からの提供をプレッシャーと感じつつも、玉置メロディが自分のなかでどう活きるのかが楽しみでしかたないのではないだろうか。今回の収録曲だと、和田アキ子や鈴木雅之、ジェロあたりにそれを改めて感じ、いつもとは違った形で滲み出ている彼らのソウル・フィーリングがとても愛くるしい。一方、歌のプロではない俳優やアイドルの場合は、曲に身体を預ければよいという気楽さや安心感と、それによって生まれるナチュラルな感性によって曲本来の旨味のようなものを表出させている(V6最大のヒットとなった“愛なんだ”は言わずもがな、風間杜夫“ハードレイン ・ ブルー”や竹中直人“ママとカントリービール”なんかも素敵だ!)。

 いずれにしても、さまざまな解釈があって歌が完成し、ヒットメイカーというよりメロディメイカーである玉置の素晴らしさを、歌い手それぞれの魅力とともに放っている楽曲群。前作同様、発表された順に楽曲が並んでいるのだが、どの時代を切っても玉置浩二の音楽の世界はなにひとつブレていない。