そよぐ風のようなボッサ・コーラス・トリオ。再始動を飾るファーストアルバム
ヴォーカル&ギター・デュオ、〈メオコラソン〉で活躍するEMiKO VOiCE (このグループではEmiko)に、同じくジャズやブラジル音楽を歌いこなすヴォーカリストAkiko、Fukikoが加わったボサノヴァ・コーラス、〈トレス・パッサリーニョス〉のファースト・アルバム。結成されたのは2012年だというからアルバム・リリースまでにずいぶん時間がかかった印象だが、途中休止期間があったのだという。
さて、ブラジルでコーラスといえば〈クアルテート・エン・シー〉がすぐに思い浮かぶが、彼女たちもその影響を受けていることは明らか。ただ彼女たちのハーモニーには3声だからこその絶妙なバランス感を楽しむ事ができる。それはきっとEmikoやAkikoによるアレンジ・ワークのおかげだろう。
収録されたのはボサノヴァのスタンダードを含む7曲。伴奏無しでいきなり心地よいハーモニーで始まる一曲目の“アテ・ケン・サーベ”はなんだか歓迎されているような気分にさせてくれるはずだ。目立つのは4曲収録したトム・ジョビン作品だが、大スタンダードの“イパネマの娘”からスキャット・ナンバーの“レッド・ブラウス”、ヴィニシウスとのコンビによる粋が詰まった“ソ・ダンソ・サンバ”、そしていかにもジョビンらしさ満載の“誰もいない海”と、これまた選曲にも絶妙なバランスを感じさせる。その合間に入り込んでくるのがベベウ・ジルベルトの“オーガスト・デイ・ソング”。英語の歌詞も含んだこの曲が入ることは、まとまりを見せた絵画に、調和を崩さずに斬新な一色が差し込まれたような感覚を覚える。さらに面白いのは大正時代の流行歌“ゴンドラの唄”を採り上げていること。トニーニョ・オルタ風のサウンドでまとめている点も面白いが、そもそもこれは女優の松井須磨子が劇中歌として歌い、女性としては先を往く歌詞に世間が動揺したという作品だけに、あくまでも独自の世界を表現したいという彼女達3人の決意が見え隠れする。そんなことを思うのは考えすぎだろうか。
LIVE INFORMATION
トレス・パッサリーニョス クリスマスライブ
○12/21(土)19:00開場/20:00開演
【出演】EMiKO /Akiko/Fukiko(vo)長澤紀仁(g)
【会場】荻窪ルースター
ameblo.jp/bossanovachorus/