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オルダス・ハーディングが来日、ちょっとヘンテコなニュージーランド発SSWを観逃すな

Photo by Clare Shilland
 

オーストラリアからステラ・ドネリー、イギリスからニルファー・ヤンヤと、才能あふれるフィメール・シンガー・ソングライターたちの来日公演が相次ぐ12月。そのなかでも、ニュージーランド出身のオルダス・ハーディングが渋谷WWW Xで開催する12月15日(日)の東京公演は、後世に語り継がれる衝撃的な一夜となりそうな予感がビンビンする。本稿では、ライヴの現場でこそ炙り出される彼女のエキセントリックな魅力に迫ってみよう。

 

ミステリアスでちょっとヘンテコなニュージーランドの歌姫

本名ハンナ・シアン・トップことオルダス・ハーディングは、ニュージーランドのリトルトン(現在はクライストチャーチの一部)を拠点とする90年生まれのシンガー・ソングライター。巨大な酒屋チェーン〈Liquor Centre〉のキャップを被り、何とも言えない表情でこちらを見つめるジャケ写が印象的なデビュー・アルバム『Aldous Harding』(2015年)はインディー・フォーク・シーンの間で少なからず話題となったが、やはり転機となったのは2017年の4AD移籍作『Party』だろう。

PJハーヴェイとの仕事で知られる名匠ジョン・パリッシュがプロデューサーを務めたこのアルバムは、生楽器を軸としたフォーキーでふくよかなバンド・アンサンブルと、ときに少女のようにも老婆のようにも聴こえる蠱惑的なオルダスの歌、そして無邪気なクワイアまで呼び込んだ幻想的なサウンド・アプローチが高く評価され、UKの老舗ラフ・トレードの年間ベスト・アルバムで1位に選ばれたことも記憶に新しい。

また、“Imagining My Man”と“Swell Does The Skull”の2曲ではパフューム・ジーニアスことマイク・ハドレアスが客演しているが、個人的にはブリストル録音という背景からも、微かにポーティスヘッドの退廃/メランコリアを感じさせる愛聴盤だった(パフューム・ジーニアスの2014年作『Too Bright』は、ポーティスヘッドのエイドリアン・アトリーとの共作である)。

2017年作『Party』収録曲“Imagining My Man”
 

今回の来日公演は、今年4月リリースのサード・アルバム『Designer』を引っさげて行われるものだ。ふたたびパリッシュと手を組みウェールズでレコーディングされた本作は、2018年に敢行した100本を超えるワールド・ツアー中に書かれた楽曲が大半だが、前作『Party』 に比べるとそのサウンドはグッと陽気でどこかミステリアスな魅力すら放っている。

ALDOUS HARDING Designer 4AD/BEAT(2019)

たとえば、表題曲“Designer”はデヴェンドラ・バンハートなどに通じる無国籍でねじれたヴァイブスをまとい、“Weight Of The Planets”にはボサノヴァ的な風通しの良さと胸躍るリズムがある。とりわけ、貴婦人を思わせる衣装でヘンテコなダンスを繰り広げたかと思えば、オムツにも似た下着とTシャツ姿で一心不乱にマラカスを振る“The Barrel”のビデオは、さながらアレハンドロ・ホドロフスキー映画のワンシーンのようにユーモラスだ。

2019年作『Designer』収録曲“The Barrel”

 

私だけのやり方で踊ってみせる

そんなオルダスのライヴにおいて、もっとも注目すべきポイントは何か。それは、ケイト・ブッシュをも引き合いに出される彼女の表現力と〈眼力〉に他ならない。以下の映像は、およそ2年半前にイギリスの人気TV番組〈ジュールズ倶楽部〉に出演し、『Party』収録の叙情的なナンバー“Horizon”を披露したときのもの。「時計じかけのオレンジ」のドルーグのように全身真っ白の衣装に身を包み、身振り手振りを交え、目玉をひん剥きながら絶唱する姿には圧倒されるが、痛みも喜びも狂気も闘志もすべてさらけ出す全身全霊のパフォーマンスは、紛れもなく我々の心を突き動かすものがある。

ちなみに英Guardianのインタヴューによると、オルダスはTLCの今は亡きメンバー、レフト・アイの大ファンだったのだという。「彼女はとても奇妙で、おかしくて、可愛い人だったけれど、決して脆くはなかった。 彼女のおかげで、私は自分だけのやり方で踊れていることに気づけたの」。それを裏付けるように、“Blend”のMVでオルダスはターコイズブルーのブラ&ホットパンツで着飾り、拳銃を手に大胆かつぎこちないダンスを踊ってみせている。彼女のことを〈アシッド・フォーク系譜の歌姫〉となんとなく認識していた読者(筆者もそうでした)は、このビデオを見ればきっとイメージが180°変わるはずだ。

2017年作『Party』収録曲“Blend”
 

現在、アメリカ→ヨーロッパ→UKと世界を飛び回っているオルダス。セットリストのネタバレは控えるが、どうやらギター、ベース、ドラムス、キーボードのメンバー4人を引き連れたバンド・セットとなる模様だ。プロ・ショットの映像がほぼ見当たらないのが残念だが、全米TVデビューを飾った〈The Tonight Show Starring Jimmy Fallon〉でのライヴ映像を見れば、『Designer』のツアーにおける彼女のモードがおわかりいただけるだろう。

アメリカでも屈指の視聴率を誇る同番組で、“The Barrel”の〈それはもう死んでる/あなたが鳩を隠し持ってるのはわかってる/私は騙されない/もう日にちは決まってるみたいだけど/イタチに卵のある場所を教えて〉というシュールな歌が響き渡った事実――。レディホーク、キンブラ、ロードに続くニュージーランドの才媛が、お茶の間にその名を轟かせた瞬間である。

 

ついにオルダス・ハーディンスが我々の前に姿を現す

12月15日(日)に渋谷・WWW Xで行われる東京公演は、現時点でオルダスにとって2019年最後のステージ。実は今年1月に4ADのショウケース・イベント〈Revue〉で一度は来日が決まっていたものの、『Designer』の制作に専念すべく出演キャンセルとなってしまったため、ファンにとっては約1年越しの来日公演実現となるわけだ。上下オレンジカラーの労働服だったり、修道服のようなセットアップだったり、各国で奇抜な衣装をまといパフォーマンスを披露してきた彼女だけに、日本ではどんな出で立ちで我々の前に姿を現すのか興味は尽きない。

なお、先述のインタヴューでは「人目を引くアートを作ろうとしたことは一度もないわ。私がやりたかったのは、ただ何かおもしろいことをする。それだけよ」と説明していたオルダス。彼女の生み出す作品にさまざまなアングルから参照点を見出すことも可能だが、もしあなたが〈ヘンテコだけどおもしろいアーティストだな!〉と思ったのなら、その直感は小難しい批評よりも正しいし、意味がある。ストレンジな謎に満ちたオルダス・ハーディングの歌声を、ダンスを、表現を、しかとその目と耳に焼き付けてほしい。

 


LIVE INFORMATION
Aldous Harding 来日公演
2019年12月15日(日)東京・渋谷WWW X
開場/開演:18:00/19:00
前売り:6,000円(別途1ドリンク代) 
★公演の詳細はこちら

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