〈モーニング娘。’19〉から〈モーニング娘。’20〉へ。時代時代の先を進むグループの1年がどのようなものになるか、それを占う2020年第1弾シングル。その魅力を楽曲から紐解いてみよう。

モーニング娘。'20 KOKORO&KARADA/LOVEペディア/人間関係No way way アップフロントワークス(2020)

昨年8月に開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」、メイン・ステージとなるGRASS STAGEでのモーニング娘。のステージで鳴らされた“LOVEマシーン”を観て、「あれから20年か……」という感慨があった。思えば20世紀から21世紀、平成から令和とメンバー・チェンジを繰り返し、自身の音楽をアップデートし続け、現代まで若々しく生き続けているグループがモーニング娘。である。月日を重ねてメタモルフォーゼしていく姿は、まさに時代とともに幅広い支持を集めながら生き続けたアイドルなのだといえるだろうし、そしてそれはワンナインからトゥーゼロへとまだ続いていく。

2019年6月に15期メンバーとなる北川莉央、岡村ほまれ、山﨑愛生が加わって14人編成となったモーニング娘。’19だが、その編成では9月からの「モーニング娘。’19コンサートツアー秋~KOKORO&KARADA~」ですでにお披露目されているものの、リリースとしてはモーニング娘。’20最初のシングルとなる本作が初となる。シングルとしては通算68枚目……という数字に改めて歴史を感じさせるが、その一方で彼女たちがフレッシュなまま最先端を行くということを示す一作でもあった。

まず“KOKORO&KARADA”は、すでにステージでの披露もあり、またYouTubeで先行公開されたMVでも話題を集めている一曲。詞曲はもちろんつんく♂であり、編曲は大久保薫という鉄板の布陣だ。モーニング娘。はおよそ20年にわたってアイドルというなかでさまざまなダンス・ミュージックとの接近を果たし、常に最新のアイドル・ソングというものを提示してきた。なかでも2013年の〈Updated〉以降顕著な、EDMとの親和性は非常に高く、その〈Updated〉にも大きく貢献した大久保の手腕は、本作においてグループをそこからさらに一歩先に進ませたように思える。

〈わかっているよ わかっているよ〉というビートとシンクロするように短いセンテンスでの歌詞が繰り返され、それがBメロでは重層的に折り重なり、ピアノのアルペジオや流麗なストリングスなど、メロディアスなフレーズを挟みながら〈君が好きさ そう好きさ〉という必殺のサビへと進んでいく。フレーズのひとつひとつはシンプルながら、それが一連で聴かれたときの完璧なカッコ良さを感じさせるというか、先鋭的でありながらしっかりアイドルとしてのキャッチーさがあるという、またすさまじい一曲が生まれたと思わせる。もちろんそこに14人となってより厚みを増したダンスも加わる。こちらも耳&目で、じっくりと楽しんでほしい。

そしてもう2曲“LOVEペディア”、“人間関係No way way”だが、これは中森明菜でいう“ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕”と“赤い鳥逃げた”との関係というか、曲は同じで歌詞とアレンジが異なるという、モーニング娘。にとっては初の試み。これがまたどちらも素晴らしく、押せ押せなベースが印象的なダンス・ミュージックに特化した“LOVEペディア”、一方シンセも煌びやかなキャッチーさが際立つ“人間関係No way way”と、たしかに同じオオヤギヒロオの絶品なメロディであるのだけど、耳への残り方がそれぞれ違う、実にフレッシュな体験となった。