©2020『あの頃。』製作委員会

この感動は二度とない瞬間である――ハロー!プロジェクトにすべてを捧げた男たちを通じて、誰にでもある愛おしい〈あの頃〉を描いた話題の青春映画がいよいよ公開。その魅力を主演の松坂桃李らが語る!

 神聖かまってちゃんの元マネージャー、あらかじめ決められた恋人たちへのベーシストなどの活動で知られる劔樹人の処女作「あの頃。男子かしまし物語」(2014年刊)。この自伝的コミックエッセイは、ふとしたことからハロー!プロジェクトのアイドルに魅了された彼が、それをきっかけに出会ったオタク仲間たちと謳歌した〈ちょっと遅れてやってきた青春〉の群像劇。ジワジワと共感・感動を呼んだこの物語を原作に、今泉力哉のメガホンでこのたび映画化されたのが「あの頃。」である。ここでは、主人公である劔を演じた松坂桃李と、劔のイチ推しだった松浦亜弥を演じる山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)、そして原作者の劔樹人も交えて、製作中のエピソードを訊いてみた。

 

あっ、松浦先輩だ!

――松浦亜弥さんが松坂さんの中学校の先輩だということは知られているところかもしれませんが、映画の主演のお話が来た時はどういう感想を持たれました?

松坂「まず、マネージャーさんからは作品の内容より先に、役の設定を伝えられたんです。〈あややファンの役、どうですか?〉って。僕が中学1年生の時に松浦先輩が3年生だったんです。学校でも〈松浦亜弥だ、サイン貰いに行こうぜ!〉なんて盛り上がってましたから、この役柄を聞いたときは、そんな偶然ってあるのか!?って、ちょっと運命的なものを感じ、作品のことを詳しく聞く前に〈やりましょう!〉と二つ返事でした(笑)。実際の現場も不思議な感じで、中学の先輩が写ってるTシャツを着た自分がいるという……(笑)」

――その松浦亜弥さんを演じたのは、ハロー!プロジェクトの後輩にあたる山﨑さん。

山﨑「ファンの方には、以前から〈雰囲気が似てるね〉って言っていただけることが多かったですし、松浦亜弥さんはハロー!プロジェクトのメンバーみんなにとってすっごく憧れの大先輩なので、お話をいただいたときは、嬉しかったんですけど、プレッシャーもすごくありました。しっかり松浦さんの役をできるのかな?って思ったんですけど、こんなチャンスはなかなかないので、自分なりに一所懸命がんばりました」

――山﨑さんがあややに似てるっていうのは、もちろん劔さんも思っていたことで?

「そうですね。あやや役の第一希望は山﨑さんでした」

松坂「劔さんの推薦だったんですか?」

「推薦というか、アイデアを出させていただいたんですけど、僕がお伝えしたのは、映画的に演技の経験がある人のほうがいいかなっていう理由で別の女優さんやアイドルさんに決めても、それはあまりよろしくないかなと。やはり、ハロー!プロジェクトのお話なので、ハロー!プロジェクトの後輩がやるべきなんじゃないかと話して、だったら実はすごく似ている方がいるんですよっていうことを製作の方々にお伝えしました」

松坂「似てましたねえ。撮影の時にびっくりしました」

山﨑「ホントですか!」

「松坂さん、〈あっ、松浦先輩だ!〉って言ってましたもんね(笑)」

山﨑「歌ったり踊ったりするわけではなかったので、松浦さんをどうやって表現しようかなって思ったんですけど、ライヴの映像を観させてもらって、MCではこういうふうに口を開けてるなとか、そういう特徴を探して、少しでも松浦さんに近づけるようにがんばりました。とにかく〈動く松浦さん〉をたくさん観ましたね」

「松坂さんも、すごく雰囲気出てました。メイキングで入っていたのが僕の知り合いだったんですけど、クランクインしたときにすぐ連絡がきて、〈松坂さん、顔と身長以外は全部劔さんですよ〉って(笑)」

――ご自身の目からも似ていましたか?

「特に、映像になって繋がったのを見ると、僕なんですよね。あと、松坂さんが部屋で楽器を弾いてるシーンがあって、カメラをテストしてるときにちょっとピンがボケた瞬間があったんですけど、これ、ホントに若い頃の僕だなって。……こんなこと言うと頭おかしいんじゃないかって思われるかもしれないですけど(笑)、ちゃんと映画を観てもらえば、僕のことを知ってる人はみんなそう見えると思います。若い頃はいまよりずっと痩せてましたしね(笑)」

松坂「そんなこと言っていただけて嬉しいです。衣装も劔さんの当時の私服でしたからね、あの赤のジャケット。作品の中でご本人のものを着れることはなかなかないので、あれを着ることによってスイッチが入りました」

「何となくずっと持ってたやつだけど、とっておいてよかった(笑)」

松坂「めちゃくちゃありがたかったです」