コラム

ピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)〈ベートーヴェン × メシアン〉偉大な作曲家の大曲からピアノの魅力を再発見するリサイタル

©Julia Wesely

*2020年5月27日追記
〈ピエール=ロラン・エマール ベートーヴェン × メシアン〉中止のおしらせ

2020年6月24日(水)に開催を予定しておりました公演〈ピエール=ロラン・エマール ベートーヴェン × メシアン〉は、新型コロナウイルス感染症の感染予防、拡散防止の観点から中止となりました。詳しくは、東京オペラシティのオフィシャルサイトをご覧ください。

https://www.operacity.jp/topics/detail.php?id=615


 

フランスとドイツを代表する大作で、エマールの圧倒的な音響世界に浸る!

 聴いた瞬間に驚きを与えられる超絶技巧をもったピアニストが増えている。彼らは複雑な音の連なりを読み解き、どんなに難渋な音型も弾きこなし、聞き手を圧倒していく。しかし、外面だけの輝かしさだけでなく、作品の中に込められた意味や想いに心から共感し、それを鮮やかに聴き手へと〈届ける〉ことのできるピアニストはまだ決して多いとはいえない。だが、ピエール=ロラン・エマールは、作品に込められた精神と美しさを最大限にできる引き出すことができるピアニストとして常に強い存在感を示してきた。どんなに複雑な作品であろうと、楽曲の輪郭、色彩、情景を美しく届けてくれる。研ぎ澄まされた技巧と輝かしさと柔らかさの絶妙なバランスのとれたタッチによって実現されるこの演奏は、あまりにも圧倒的でありながらも、楽譜に書かれたすべてを音へと昇華させることだけに捧げられているために、まったく押しつけがましくなく聴き手へと届く。濃淡、明暗、緩急と様々なコントラストを巧みにコントロールしながら展開する演奏は、音量の幅も広いために、深い奥行きも感じさせる。

 今回のリサイタルはメシアンの《鳥のカタログ》の核ともいえる楽曲〈ヨーロッパヨシキリ〉とベートーヴェンの32曲のピアノソナタはおろか、あらゆるピアノ曲の中でも難曲中の難曲といえるピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》のカップリング。このプログラムは、エマールがベートーヴェンの生誕250年を記念し世界中で取り組む〈ベートーヴェンとアヴァンギャルド〉シリーズの一環である。どちらも複雑な構成と超絶技巧、さらに長時間の集中力を求められる。

 メシアンはエマールの最も得意とする作曲家の一人であり、“ヨーロッパヨシキリ”は様々な音響効果を通して、昼から夜、そして深夜へと移り変わる時間の中で様々な鳥の鳴き声や花が描かれていく作品。エマールの音色の魅力を存分に楽しむことができるだろう。一方、メシアンと対局にあるようにも思えるベートーヴェンも、楽譜に内包されたメッセージを演奏者が紐解き、聴衆に届ける難しさと喜びに溢れ、エマールのピアニズムを味わうのにふさわしい作曲家だ。しかも《ハンマークラヴィーア》はベートーヴェンのすべてのピアノ独奏曲の中でもとりわけ宇宙的な広がりを感じさせるため、メシアンとの親和性も高い。現代音楽につながる〈道〉を切り拓いたベートーヴェンとその道の中で燦然と輝くメシアン。二人の偉大な作曲家による大曲を通して、ピアノという楽器の魅力、彼らの遺した音楽の輝きを再発見できるはずだ。

 


LIVE INFORMATION

ピエール=ロラン・エマール ベートーヴェン × メシアン ※中止
〇6/24(水)19:00開演
【会場】東京オペラシティ コンサートホール
【曲目】ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106《ハンマークラヴィーア》/メシアン:《鳥のカタログ》から「ヨーロッパヨシキリ」(1957)
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=13512

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